大麻ベイプの模造品台頭、違法メーカーの実態とは

野放しの違法メーカー

ということはつまり、汚染の大半は規制の目が届かないところ、つまり闇市場で起きているのは間違いなさそうだ。違法メーカーがベイプに混ぜ物を入れる理由はいくつかある。ひとつには、THCやCBDカートリッジに含まれるある種の化合物を希釈し、結晶化や変色、経年劣化を防ぐためだ。だが、これは良い方に解釈した場合だ、とCBD製造企業TribeTokes社のCEO、デイジャ・タフツ氏は言う。「ビタミンEの場合、卸値が非常に安いんです」。彼女の会社ではテルペン――大麻やその他天然由来の製品にもとから含まれている化合物――を使って、ベイプオイルの結晶化を防いでいるが、費用がかさむ。「1g当たりのコストは(カナビノイド)オイルと同じぐらいの値段になりかねません。ですから市場が激化すればするほど、価格で勝負しようとするところが増えてきます。コストの問題もありますし、怠慢もありますね」

違法な大麻ベイプの規制が困難だとすれば、合法CBD業界はさらに難しいかもしれない。2018年の農業法によりCBDが全国で購入できるようになって以来、大麻由来の化合物はいまや健康サプリメントとなり――合法大麻の莫大な収益に追い抜こうとする勢いだ。だが、CBDのベイプにはTHCほどの「興奮作用」はないにしても、やはり摂取したくないような化学物質がカートリッジに詰まっている可能性はある。それにTHCの規制が厳格な一方、CBDは無法地帯だ。

「CBDの世界では、ありとあらゆるおかしなことが起きています」と言うのはSteep Hillの最高売上責任者、トニー・ダニエル氏だ。「他の州から来た製品の中には、CBDはかけらも検出されないこともあります。あるいは、CBDチンキなのにCBDは全く含まれず、代わりに咳止めシロップが含まれていたり。私の想像ですが、消費者にある種の快感を味わってもらおうという(メーカー側の)努力でしょうね」 すなわち、今回の危機を招いた原因と疑わしき混ぜ物などが、最寄りのCBD業者のもとに紛れ込んでいる可能性があるということだ。

TribeTokes社は、違法カートリッジメーカーが消費者に警告することなく混ぜ物を加えている可能性に気がついた。そこで同社では、現在の危機が起きる以前から、全ての自社製品にQRコードを付け、消費者に製品の検査結果が分かるようにした。「我々は先を見越して、消費者を啓蒙し、本来これはメーカーがやるべきことだと見せたかったのです」とタフツ氏。「規制で対処することも可能だとは思いますが、メーカーが自主的に消費者教育を行い、より安全な選択肢を提供したいと思うなら、たとえ法律で義務化されていようといまいと、こうした対策をとるべきだと思います」

事実、ローリングストーン誌の取材に応じた大麻業企業のいくつかは、規制の及ばない市場ではこのような大規模の危機が起こる危険が常に潜んでいることを認識し、早い段階で消費者の保護に積極的な対策を講じていたと述べた。だとすれば、なぜ政府はもっと早く手を打たなかったのか?

Translated by Akiko Kato

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