The 1975インタビュー「ルールを設けないこと、それが僕たちのルール」

The 1975の4人をつなぐ絆

「いてぇ! このクソ犬!」Mayhemに背中を噛まれ、ヒーリーはそう声を上げた。最近迎えられたこの子犬は、どうやら首輪を外したくして仕方がないようだ。「噛むんじゃねぇよ、とんでもねぇマナー違反だ」

ヒーリーがMayhemを迎えたのは、Angelic Residential Studioに移ってすぐのことだった。アメリカ人である筆者にもわかりやすいよう、彼はその建物を『ダウントン・アビー』に例えてみせる。安全で人里から離れており、制作に集中できる環境を探していたヒーリーとダニエルは、「ミュージック・フォー・カーズ」期の作品の大半をここで作曲およびレコーディングして以来、その空間を大いに気に入ったようだった。

「こんな風に暮らすのはこれが初めてじゃないんだ。ちょっと極端ではあるけどさ」ヒーリーは現在の隔離生活についてそう話す。「僕とジョージはこれまでもずっと一緒だったしね」

ヒーリーとのビデオインタビューの間も、そばにいたダニエルは時々自身の考えを述べていた。ヒーリーはバンドのスポークスマンとして人前に出ることが多いが、2人の絆はバンドのダイナミクスの鍵を握っている。『仮定法に関する注釈』の最終曲「ガイズ」は、10代の頃に出会ったメンバーたちとの友情を祝福する曲だ。ヒーリーは同曲で、高校を卒業してバンドを結成したばかりだった2人のアパートでの共同生活や、一緒に日本を旅行した時のことなど、人生の半分を共に過ごしてきた友人との思い出について歌っている。

「急に思い立ったわけじゃなくて、単に初めてちゃんと曲にしたってだけさ」同曲の真摯なトーンについて、ヒーリーはそう話す。「僕たちのポスターに使われてる写真って全部、メンバーが仲良さそうに抱き合ってるやつばっかなんだ。何かしらのキャンペーンをやるたびに、僕たちが互いを思いっきり抱きしめてる写真を撮って、それを売って金にしてる。僕は長い間、自分たちの友情についての曲を書こうとしてたんだ」


シンシナティで行われたThe 1975のショーでのマティ・ヒーリー(Photo by Amy Harris/Invision/AP/Shutterstock)

ダニエルはバンドが良好な人間関係を保っている理由として、初期の頃から一貫して全員がエゴを排除してきたことを挙げる。「出会った頃の僕たちはみんな若かったから、競争意識なんて持ってなかったんだ」彼はそう話す。「20代に入って、クリエイティブ面でそれぞれが自分の考えを持つようになる前のことさ」

他のメンバーであるアダム・ハンとロス・マクドナルドの2人は現在、イギリス国内のやや都市部に近い場所にあるそれぞれの自宅で隔離生活を送っている。「そう遠くないうちにまた集まることになると思うよ」ダニエルはそう続ける。「新しい曲を作らなきゃいけないっていうプレッシャーを感じていたくないんだよ。だってそんな必要はないからさ。そういうプレッシャーから解放されてる時にこそ、何かが自然と生まれてくるものなんだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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