オアシス「ワンダーウォール」25周年 「ロックの時代」最後のスタンダード曲を振り返る

ギャラガー兄弟が抱いてきた複雑な思い

1994年から「ワンダーウォール」の版権を管理しているソニー/ATVミュージックパブリッシングの社長で、グローバルマーケティングの主任も務めるブライアン・モナコ氏は、完成直後の「ワンダーウォール」を聞いた時のことを今も覚えている。「当時(オアシスは)ロック路線で出てきたから、『おお、こいつはなかなか面白いぞ』と思ったよ」とモナコ氏は振り返る。「リアムの声が前面に出ていて、感情が思い切りストレートに伝わってきた」。モナコ氏は「ワンダーウォール」を、同社で「上位価値の曲」と呼んでいる――同社では他にビートルズやボブ・ディラン、キャロル・キング、スティーヴィー・ワンダー、クィーン、エド・シーラン、レディー・ガガの作品を管理している。


Photo by Stefan De Batselier

しかし長年にわたり、ギャラガー兄弟は「ワンダーウォール」を愛し、そして愛想をつかしてきた。昨年ノエルはスマッシング・パンプキンズとのジョイントツアーを終えた後、この曲のいまだ衰えぬ力に驚いているとイギリスの雑誌The Faceに語った。「アーカンソー州のゴス系の子が、1人はランシドのTシャツ、もう1人はKISSのTシャツを着て、肩を組んで「ワンダーウォール」を歌うなんて、そうそうお目にかかれるもんじゃないぜ!」とノエル。「しかも、俺たちの他のシングルには全く反応なし! どうなってんだ? クレイジーだよ」

これに関しては珍しく、リアムも兄とほぼ同意見だ。「Spotifyとかの騒ぎはちっとも理解できない」と彼は言う。「ただ言えることは、あの曲が大好きな連中もいれば、大嫌いな連中もいる。「イマジン」と比べるつもりはないが、『「イマジン」? 勘弁しろよ』って言う連中は大勢いる。でも中には、最高の1曲だというヤツもいるんだ」

もうひとつ「ワンダーウォール」についてあやふやな点は、曲のインスピレーションだ。この曲を書いた時、ノエルはのちに妻となるUKクラブの女王メグ・マシューズと付き合っていたことから、多くの人々が彼女について歌った曲だと推測した。おそらくは2000年に破局したからだろう、ノエルはこの説を一蹴した。最近もBBC Radio 2でこう語っている。「メディアがあの話に飛びついたせいで、あの曲は俺にとって意味がなくなってしまった。あんなこと書かれて恋人がそれを読んだら、お前の歌じゃないんだ、なんて言えるか? あれは空想上の友人がやって来て、自分を解放してくれる歌なんだ」

曲のタイトルがジョージ・ハリスンの1968年の意欲的なソロアルバム『Wonderwall Music』(邦題:不思議の壁)にちなんでいることは、リアムも認めている。だが同時に、あの曲のルーツは幼いころ、兄弟で寝室の壁紙に思ったことを書き止めていた時代に由来するとも考えている。「でも明らかに、ノエルにはそれじゃ十分じゃなかった」とリアム。「それであいつはどこかの女の歌だということにしたのさ」

だがカトリーナ・ラッセル(オアシスの全盛期を支えた元クリエイション・レコーズのスタッフ)は、初めてこの曲を耳にした瞬間を覚えている。今も昔と変わらずマシューズと親しくしているラッセルは、その日ロンドンのカムデンで、ノエルとマシューズが同棲した家にいた。するとマシューズが興奮気味に、恋人が作った歌をぜひ聴いて、と言ってきた。「『いいわよ、どんな曲?』と聞いたら、彼女は『私についての歌なの!』と言ってました」とラッセルは振り返る。そこへノエルが現れて、ギターで「ワンダーウォール」を演奏した。「ただもうびっくりしました」とラッセル。「ワンダーウォールって何?と思ってメグに訊いたら、『そんなことはどうでもいいの!』って言われました。でも、人生の中で一番美しい曲でした。あんなふうに好きな人を曲にするなんて――私についての曲じゃなくて、ちょっと嫉妬しました」

Translated by Akiko Kato

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