ブルース・スプリングスティーンの名曲ベスト40選

13位→11位

13位 「ジャングルランド」/『明日なき暴走』(1975年)収録



スプリングスティーンはかつて『明日なき暴走』のグランドフィナーレを「精神的な戦場」と表現した。彼自身はこの曲のストーリーについて語ったのだが、曲の作りについても同じことが言える。1974年半ばに楽曲「明日なき暴走」と同時期にレコーディングしていたが、セッションの途中で行き詰まり、スプリングスティーンはスタジオを変えた。スパニッシュ風のイントロはカットされ、何度も録り直してはボツにしたという。よく知られているのは、スプリングスティーンがクラレンス・クレモンズの盛り上がるサックス・パートの一音ずつに何度も注文を付け、完璧だと思うまで16時間も続けたというエピソードだ。「俺たちにできたのは、ただ耐えること。マリファナを吸い続けて気を静めていた」と、クレモンズは後に当時のセッションを振り返っている。しかし結果として、ならず者の上手く行かない恋愛を描いた9分間に及ぶ長編の傑作ができあがった。曲はスキ・ラハヴの緻密なバイオリンとロイ・ビタンのジャジーなピアノで始まり、ミニチュア版のロックオペラへと展開していく。ハイライトは、クレモンズによる長く壮大なサックス・ソロだ。このソロはスプリングスティーンが、いくつかのテイクをつなぎ合わせて編集した。クレモンズ自身も完成したソロ・パートの出来栄えには大満足で、スプリングスティーンとの共作の中でも最高傑作だと思っている。「私には、あのソロから愛が聞こえる」とサックスマンは、自叙伝で振り返っている。

12位 「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」/『ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード』(1995年)収録



『トンネル・オブ・ラヴ』『ヒューマン・タッチ』『ラッキー・タウン』とかなり個人的な内容をテーマにした3枚のアルバムをリリースした後で、「ストリーツ・オブ・フィラデルフィア」を作る機会を与えられた。それをきっかけにスプリングスティーンは、自身曰く「社会的テーマを含んだ」最高傑作の何曲かが自分の経験したこともない領域へと達した感覚を、思い起こすことができたという。「自分自身の中にその場所を再発見した感じだ」と彼は言う。スプリングスティーンは以前から、ジョン・フォード監督の映画『怒りの葡萄』がお気に入りだった。「タイトルの“トム・ジョード”は、この作品の主人公だ。作品と自分とを再びつなぎ合わせて、ひとつの作品に仕上げたかった」という。またこの曲を作るにあたって、米国共和党員による社会的セーフティーネットへの攻撃も彼の念頭にあった。そしてあるライブでスプリングスティーンは、この曲を「ギングリッチ・モブ(共和党ニュート・ギングリッチ議員の支持者)」に捧げた。当初は普通のロックソングとして作るつもりだったが、結局は静かなアコースティックのアレンジでリリースした。2年後、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが、意外なモダンロック・バージョンのカバーでこの曲をヒットさせた。スプリングスティーンと、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロとのステージは圧巻だった。

11位 「ロザリータ」/『青春の叫び』(1973年)収録



この曲は、その後何十年も続く本物のアンセムとなり、ありとあらゆるコンサート会場を大興奮に包むこととなった。ヴァン・モリソン・スタイルのリズムとメロディは、スプリングスティーンが1972年にアコースティックギターでプレイしたソウルフォーク曲「ヘンリー・ボーイ」でも聞かれる。1973年前半に「ロザリーナ」をレコーディングする頃にスプリングスティーンは言うまでもなく、曲の歌詞のようにロッカーとして頭角を現していた。“親父にこれが最後のチャンスだと言ってやれ/お前の娘にいい目を見させてやれるんだ/ロージー、レコード会社が俺に大金を積んでくれたんだぜ”と彼は歌う。スプリングスティーンは後に、「俺の書いた曲は俺自身の生き様なんだ。全ては本物の話さ。ビッグ・ボールズ・ビリーとかウィーク・ニード・ウィリーとかいう登場人物なんかも全員が実在する」と語っている(この曲は、かつてのガールフレンドだったダイアン・ロジトをモデルにしているとも言われているが、彼自身は曲に登場する「ロージー」の素性を明かしていない)。この曲には、ロージーの父親が娘を彼から遠ざけようとする恋愛のジレンマが描かれている。しかし唯一、スプリングスティーンが後に「これは自分で書いた中で最も使える歌詞だと思った」というのが、“いつか二人で振り返った時に、全てが笑い話になるだろう”というフレーズだ。

Translated by Smokva Tokyo

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