YOASOBIが語る、影響を受けた10冊の本

YOASOBI

アーティストの世界観を構成する「本と音楽」の関係にフォーカスをあてるこのコーナー。今回登場するのは、「小説を音楽にする」をコンセプトに昨年結成された2人組ユニットYOASOBI。

もともとはボカロPとして、洋楽のエッセンスも散りばめた楽曲を作っていたAyaseと、現在も「幾田りら」名義でソロのシンガー・ソングライターとしても活動中のikura、それぞれの個性が融合したユニークな音楽性が今、日本の音楽シーンを騒がせている。今回2人には、「好きな本」「影響を受けた本」としてそれぞれ5冊ずつ挙げてもらい、自身のクリエイティブとの繋がりについて熱く語ってもらった。

※この記事は2020年7月28日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.11』に掲載されたものです。

【画像】Ayaseとikuraが選んだ本の書影

『ボールのようなことば。』
著:糸井重里

ーお二人には「好きな本」「影響を受けた本」をテーマに5冊ずつ選んでいただきました。ikuraさんが最初に紹介してくださるのは?


ikura 糸井重里さんのエッセイ集『ボールのようなことば。』です。表紙に惹かれて手に取り、「どんなことが書かれているのだろう?」と思って1ページ目の文章に目を落としたら、孤独について「ひとりぼっちは北極星の光」と表現されていたんです。人は一人で生きてはいけないけれど、すべての始まりは「一人」なんだなということを、こんなふうに表現されていることに胸を打たれました。読み進めていくと、他にもハッとさせられるような素敵な言葉が散りばめられていて。作詞をするときのインスピレーションにもなっている大切な本ですね。

『ふたつのしるし』
著:宮下奈都

ーその次に選んでいただいた宮下奈都さんの小説『ふたつのしるし』は、“ハル”という名の2人の男女が、子供から大人になるまでを描いた恋愛小説ですね。

ikura 遠く離れた場所で、別々の人生を歩んでいた2人が震災の日に初めて出会う物語です。彼らは学生時代、周囲との違和感や生きづらさを抱えながら生きていて、それでもその「違和感」を大切にしながら大人になっていく。自分も小中学生の頃に「いじめ」まではいかなくとも、何となく「違和感」のようなものを覚えていたんです。でも、そういう気持ちを「排除」するのではなく、自分の中にしっかり持って真っ直ぐ生きていくことが大事なのかなって、この本を読んだ時に思えたんですよね。

ー違和感を「大切にする」って素敵な言葉ですね。それが「自分らしく生きる」ことにもつながっていくような気がします。

ikura そうですよね。それがあったからこそ、曲を書いて活動している自分がいると思うので、大切にしてきてよかったなとも思えた作品でした。

ーAyaseさんは今回、漫画をたくさん選んでくださいましたね。

Ayase とにかく漫画が好きで、メジャーなものからマイナーなものまでかなりの数を読んできたのですが、ずば抜けて好きなのが『東京喰種 トーキョーグール』です。ストーリーはもちろん、石田スイ先生の描く絵が本当に素晴らしくて。グロテスクな中にも、美しさを感じずにはいられないような作品なんです。

『東京喰種 トーキョーグール』
著:石田スイ

『ソウルイーター』
著:大久保篤

ーそういえばYOASOBIの楽曲「夜に駆ける」も、「美しさや可愛らしさの中に内包されるグロテスクさを表現した」と、以前のインタビューでおっしゃっていましたよね。

Ayase はい。グロテスクなものをただグロテスクに描くよりも、その方がより深い感情を想起させると思っていて。そういう意味でも『東京喰種 トーキョーグール』には、すごく影響を受けているのかもしれないです。それから大久保篤先生の『ソウルイーター』も、主人公の着ている服や舞台となる街の建造物、シメトリックな構造などヴィジュアルが本当にオシャレでカッコいい。



ーそうした映像美には、漫画だからこそ出来る表現手段を感じますか?

Ayase 現実世界とはかけ離れたストーリーなのに、ディティールをリアルに描きこむことによって、日常と地続きの世界のように感じられるというか。フィクションとノンフィクションのバランスはすごく大事で、そこが物語に没入出来るかどうかの鍵になっている気がします。

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