山中さわお、ロックンロールに染まったツアーファイナル「音楽がどうしても必要なんだ」

定刻になると、会場は暗転。観客たちからのクラップと共に、山中はアルバム制作を共にした千葉オライリー(Dr / THE BOHEMIANS)、安西卓丸(B / ex. ふくろうず)、木村祐介(G / ArtTheaterGuild)とともにステージに登場し、『Nonocular violet』のタイトル曲「Nonocular violet」からスタート。流れるように穏やかなアルペジオとともに曲は始まり、「輝く未来はきっと目には見えない花を育てて 僕らに手招きしてるって」、「キミとの再会も叶うだろう」と、曲に身を委ねるようにゆらゆらと歌いあげる。ゆったりと幕を開けたように見えたが、「POP UP RUNAWAYS」、「The Devil’s Pub」と少しづつエンジンを掛けていく。曲に合わせて山中は腰をくねらせたり、間奏中にはギターのヘッドで客を射抜くように構えたりと、少しずつ会場と共にテンションが高まっていく。

「本当に久しぶりじゃねえか。皆元気かい? 俺はもちろん元気だ」、「集まってくれてありがとう。最後まで本当にいい夜にしたい、よろしくね」と挨拶を済ませると、タイトル通りステージが真っ赤に照らされた「RED BAT」、「オルタナティブ・ロマンチスト」と立て続けに披露。エンジンが掛かりノリノリな山中に負けじと、木村も大きく前に出てきて切れ味のあるギターソロで魅せる。「オルタナティブ・ロマンチスト」の間奏では、千葉オライリーのビートも力強く、それに重なる安西卓丸の滑らかなベース。ツアー中の何度ものライブを経て、バンドとしてのグルーブもガッチリと高まっているのが感じられた。


Photo by 岩佐篤樹

「Old fogy」、「ノスタルジア」とどこか哀愁の漂う楽曲を経て、山中のMC。今回のツアーで回った地方の小さなライブハウスの状況について話すとともに、「今回のツアーは俺ノーギャラだから、皆はプロのミュージシャンのライブを観に来たと思ってるでしょ? 違うのよ、バンドが大好きなおじさんを観に来てるだけだから。バンドが好きなおじさんは音楽がどうしても必要なんだ」と切実に語り、会場からは大きな拍手が巻き起こる。事実、デビューから30年以上を経ても第一線で活躍し続ける彼のその言葉は、説得力を持って響いた。

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