一方で、教育の効果は単発では一時的なものに留まってしまう傾向があることも指摘されており、スティグマを払拭するためには、継続的な取り組みが必要になります。また、知識だけでなく、当事者や家族が充実した人生を送れるような具体的なサポートも同時にとても重要です。2022年からは高校でもメンタルヘルスについて授業で取り上げられるようになります。その内容には「精神疾患への差別や偏見」も含まれています。こうした新しい流れを歓迎しつつ、今まで知る機会のなかった全ての世代も、アーティストやアスリートたちの勇気ある発言や行動をきっかけに、新しい価値観を新しい世代と共有し、精神疾患に対して正しい認識を持ち、社会的なサポートも広がっていくことを期待します。また、それはアーティストやアスリートとファンの相互に良好な関係を構築し、さらに素晴らしい作品やパフォーマンスを生むことにもつながることだと思います。
参照:
「精神障害者に対する差別・偏見を軽減するために歴史を伝えることは有効か〜精神保健福祉行政史を伝えることの有効性をアンケート調査から考察する」 宮沢和志 金城学院大学論集. 社会科学編 2013
「精神障害当事者の家族に対する差別や偏見に関する実態把握全国調査」公益社団法人全国精神保健福祉連合会 2020
「精神障害者に対する偏見の研究〜認知・感情・社会的距離に着目して〜」山中まりあ・森永康子・古川善也 広島大学心理学研究 第17号 2017
「精神障害者に対する偏見減少のための教育的介入の効果〜高校生における教育的介入の評価」山口創生・三野善央 第54巻 日本公衛誌 第12号 2007
「精神疾患の生物医学的知識は、スティグマ(差別・偏見)の軽減に役立つか〜これからのスティグマ軽減戦略〜」小塩靖崇・山口創生・太田和佐・安藤俊太郎・小池進介 東京大学大学院総合文化研究所 2019
精神病や患者への偏見をなくそう! スイス初のデモ行進 swiss info 2019/10/11
<書籍情報>
手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』
発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。
手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。
Official HP:
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