ホイットニー「カントリーロード」カバーに感じる匠のドラム、鳥居真道が徹底考察

曲のセクションごとにバックビートの音を変えているのも憎い。1番のヴァースはハット、2番ではクローズドリム。Dメロはキックとスネアによる「ドン、タン、ドン、タン」というシンプル極まりないパターンで潔い。『Candid』を聴いていて思いましたが、ホイットニーはとにかくアレンジが巧い。わりかしフリーフォームなヘッドアレンジ的な部分とキメの部分のバランスが絶妙です。



「Take Me Home, Country Roads」の2番に登場するのは、ワクサハッチー名義で活動しているケイティ・クラッチフィールドです。2番のサビでは、アーリックがコーラスを担当しています。その後、Dメロをアーリックが歌って、ラストのサビではアーリックが主旋律を、クラッチフィールドがハモリを歌います。このようなパートのスイッチひとつ取っても気が利いているなあと思う次第であります。

ドラムのミックスもそれぞれの太鼓の質感が統一されていて一体感があってとても良いです。歪んでいて食べたら歯ごたえのありそうな音とでもいいましょうか。オーブンでこんがり焼いたような質感のサウンドがとても好きです。各楽器の音もそこまでセパレートされておらず、ひとつの塊のようになっている点にもグッときます。

1番のサビ以降に登場する1拍目のハイハットのオープンも見逃すわけにはいきません。「カントリーロード」を演奏するにあたり、これをもってくるセンスに脱帽です。どうしてもエアロ・スミスの「Walk This Way」を連想させてしまうので、ドラマーの多くにとってなかなか手を出せないパターンではないでしょうか。最近たまたま聴いていたリンプ・ビズキットの『Significant Other』収録の「Just Like This」も1拍目がハットのオープンです。こちらは「Walk This Way」を意識したものだと思われます。

YouTubeでライブ動画を観ると、オーリックは体全体をバネにして叩いているような印象を受けました。さながらげっ歯類の跳躍といったところでしょうか。重心が低く、わりと重めのグルーヴを演奏するオーリックですが、スティックのタッチは柔らかく、跳ね返りをうまく利用して音を繰り出しているような感じがあります。

Rolling Stone Japan 編集部

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