『ザ・ビートルズ:Get Back』は期待以上に最高だった 絶対に見ておくべき理由とは?

「大人しい場面」こそ醍醐味

『Get Back』は1969年1月、ニューアルバムの制作に取りかかる4人の姿を追っている。このアルバムが、のちに悲喜こもごもの最後の作品となる『レット・イット・ビー』だ。バンドはリハーサル風景を1本の映画にしようと、撮影クルーを招き入れた。映画はその月の最後に行われたかの有名な屋上ライブへと向かっていく。映画版『レット・イット・ビー』のほうは、バンドの解散を描いた残念な作品として有名だ。ご覧になった人であれば、そうした悪評も当然だとご納得いただけるだろう。

ジャクソン監督はアーカイブ映像を掘り起こし、60時間分の映像に目を通した――昨年ローリングストーン誌に語ってるように、最初は本人も気が進まなかったそうだ。「すでに世に出ている映像が、これならOKと彼らが判断したものだとすれば、残り55時間はどんな内容なんだろう?と思ったよ」 だが苦労の末に実ったものは、映画版『レット・イット・ビー』のような薄っぺらい興ざめ作品とはまるで違う。笑いと音楽とバカ騒ぎ。喧嘩するビートルズ。ふてくされるビートルズ。互いに神経を逆なでするビートルズ。彼らの友情は複雑で乱雑だ。だがそうした一触即発状態にも、彼らはつねに切磋琢磨し続けた。

『Get Back』は屋上ライブに至るまでの日々を辿っていく。基本的には「予定通りにショウを成し遂げられるのか?」という作り――映画『ハード・デイズ・ナイト』と同じ流れだ。こざかしいナレーションや有名人のインタビューはなし。4人だけ。「そこがピーター・ジャクソン監督の最新作『Get Back』の素晴らしい点だよ」と、この夏ポールもローリングストーン誌に語っている。「やや大人しい場面もあるよ。それこそまさに、監督が80時間分の映像の編集に明け暮れた証拠だ。彼は非常に配慮して些細な瞬間も全て残したんだ。それでも中には、80時間まるまる見たい、というファンもいるだろうね」

そうした「大人しい場面」こそがこの映画の醍醐味だ。感動的な瞬間がぎっしり詰まっている。ヨーコにガムを差し出すリンゴ。男性陣が「Let It Be」を演奏している間、ひそひそ話をするリンダとヨーコ。ポールが「Strawberry Fields Forever」をピアノで演奏する間、ジョンは数フィート離れた場所に腰を下ろし、気にしない風を装ってギターの上にかがみこむ。まるで今この瞬間起きていることは自分には関係ないとでも言いたげに。

Translated by Akiko Kato

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