『ザ・ビートルズ:Get Back』は期待以上に最高だった 絶対に見ておくべき理由とは?

ヨーコとリンダにまつわる名場面

おかしなことに、長年ヨーコはレコーディングの邪魔者というレッテルを張られてきた。だが『Get Back』はそうした誤った認識をついに覆す。彼女があの場にいたのはジョンが彼女を必要としていたからだ。ただし、彼女が干渉しないという条件で。ひとつ貴重なシーンがある。メンバーが「Don’t Let Me Down」に取りかかっている間、胸の内をさらけ出すこの曲のインスピレーションとなった女性ヨーコが、ジョンの肩についたパンくずを払い落とすのだ。彼女が新聞を読むかたわらで、ジョンが「この愛は永遠に続く!」と泣き叫んでいる。



ポールはいつも一足早く、おそらく他のメンバーはまだ目を覚ましていないうちからスタジオに入る。彼がピアノに座って「Martha My Dear」をかき鳴らし、作曲方法を披露する名場面がある。「ここから先は」とポールが説明する。「自分で止めない限り、誰にも止められないんだ!」 いかにもポールらしい名言だ。

音楽フォトグラファーのリンダ・イーストマンをポールが同伴するシーンもある。カメラマンに彼女を紹介し、「リンダはカメラマンなんだよ」と付け加える。それからピアノに腰かけ、あっと驚く新曲をいくつか弾いてみせる。「Golden Slumbers」「Another Day」「The Long and Winding Road」。どれも未完成だったが、彼はひたすらリンダのために披露する。この女性にいいところを見せようとしていたのだ。

(この些細なシーンはいくら強調しても足りない。この時すでにポールはリンダを生涯の伴侶と心に決めていたのだ。彼は正しかった。2人はその後38年間ずっと、リンダが息を引き取る日まで一心同体だった。この時、彼はまだ若きロックスターで、地球上でもっとも愛される独身男性だったのは言わずもがな。だが彼はそんなことには動じない。一生に一度の決断に、絶対の自身を持っていた。当時の彼は26歳。認めよう、我々世間はポール・マッカートニーの謎にかすりすらしていない。こんな人間は後にも先にも彼しかいない)

Translated by Akiko Kato

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