ポールとリック・ルービンが語る、『マッカートニー 3,2,1』とザ・ビートルズの普遍性

ポール・マッカートニーとリック・ルービン (C)2021 MPL Communications, Inc.

ポール・マッカートニーがリック・ルービンを迎えて、ザ・ビートルズやソロ活動を振り返る6部構成のドキュメンタリー・シリーズ『マッカートニー 3,2,1』がディズニープラスにて配信スタート。二人が同作や『ザ・ビートルズ:Get Back」について語り合った貴重インタビューをお届けする。

ポール・マッカートニーの様々な側面は、既に広く知られている。マッシュルーム・カットをしたチャーミングな若者、60年代のシーンを切り拓いたアヴァンギャルドなイノベーター、髭を蓄えた良き夫にして父親、そしてロックンロールの生ける伝説。しかし『マッカートニー 3,2,1』で描かれているのは、筋金入りの音楽オタクという知られざる彼の一面だ。伝説的プロデューサー、リック・ルービンとの対談という形式を取っている本作では、2人がビートルズの音楽にじっくりと耳を傾け、曲にまつわるエピソードを語り合ったり、些細なディティールについて解説する。かつてないタイプの本ドキュメンタリーは、ビートルズのファンに衝撃を与えた。「曲の1つ1つに、それを書き上げるまでの物語が存在するんだ」。マッカートニーは本誌にそう語った。「幸いにも、僕はそのディティールまで覚えてるんだよ」



ポールとリックに共通する点は、過去を振り返ることなく、絶えず前進し続けていることだ。リックによると、それは音楽における「スピリチュアルな道のり」の一部だという。マッカートニーは現在、過去に類を見ないほどのクリエイティビティの爆発を経験しており、屈指の出来だった2018年作『Egypt Station』と2020年作『 McCartney III』はどちらもNo.1ヒットとなった。そして今現在、フィービー・ブリッジャーズ、ベック、アンダーソン・パーク、セイント・ヴィンセント、ブラッド・オレンジといった若き才能を集結させた『McCartney III Imagined』は本国で大ヒットを記録している。50年以上前の出来事を描いたドキュメンタリーで世間の話題を集めながら、新譜をチャートの頂点に送り込めるアーティストは、彼をおいて他にいない。

ポールとリックの両者はZoomでの3者インタビューに応じ、ドキュメンタリーの制作過程について本誌に語ってくれた。ポールは座り心地の良さそうなソファに腰をかけ、スナックとコーヒーを手にしていた(「食べながらの取材になるけど、大目に見てよ。僕は食べながらでもちゃんと話せるから。ジェラルド・フォードとは違ってね」)。一方、リックはどこかのビーチにいた。物理的な距離は何千マイルと離れていたが、2人穏やかでフレンドリーな間柄は画面越しでもはっきりと伝わってきた。それは2人の笑い声にもはっきりと現れている。ドキュメンタリーでも見られたように、過去に経験した出会いや出来事に言及しながら進められる2人の会話は、まるで2人が歩んできた道のりを辿るミステリーツアーだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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