BTSが描いた「未来」の姿 米ローリングストーン誌カバーストーリー完全翻訳版

7人の個性が揃うまで

2013年にBTSがデビューを果たした時点で、3つの大手レーベル(シヒョクはその1つであるJYPの専属プロデューサーだった)がパワーを持っていた韓国の音楽業界において、Big Hitはいち弱小レーベルに過ぎなかった。また同レーベルは、ミュージックビデオの制作中に資金が底をついたと報じられていた。しかし現在、BTSが収めた成功のおかげでHYBEは巨大な株式公開会社となり、先日ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデを抱えるアメリカのマネージメント会社を買収した。「私たちは非現実的にさえ思える目標と基準を設け、少しでもそこに近づこうと常にベストを尽くしています」。シヒョクはそう話す。「それは当時から変わっていません」

長期にわたる人材発掘とオーディションを経て、RMと同じくラッパーのSUGAとJ-HOPE、シンガーのJUNG KOOK、V、JIMIN、JINの6人がBTSに加入することになった。最年少メンバーでありながら、圧倒的にソウルフルなテナーボイスの持ち主であるJUNG KOOKは、複数のエージェンシーから契約の話を持ちかけられていたが、RMの存在を理由にBig HitとBTSを選んだという。「RMがとにかくクールだったから」。JUNG KOOKはそう話す。「僕はシンガーがどういうものなのかを、よく理解していませんでした。でも彼がラップするところを見て、ものすごく刺激を受けたんです。運命が僕たちを引き合わせてくれた、僕はそう信じています」

RMに続いてSUGAとJ-HOPEが加入した時、シヒョクはストレートなヒップホップのグループをイメージしていた(当初は他にも複数のラッパーを訓練生として抱えていたが、ポップミュージックとのハイブリッドというBTSの方向性が定まったことで、代わりにシンガーを迎えることになった)。同じくEpik Highのファンであり、T.I.等のアメリカのラッパーも好きだというSUGAは、グループに加入した時点で既に優れたラップのスキルを身につけていたが、両親には理解されなかったという。「父も母も、ラップは好きじゃなかったんです」。SUGAはそう話す。「だから僕が進もうとした道に、2人が反対したのも無理はなかった。両親に認めてもらいたいがために、僕はより努力を重ねることができたと思うんです」。2016年発表のハードなソロ曲「The Last」(Agust Dの名で発表)で、SUGAは自身がOCD、社会不安、そして鬱と格闘していることを告白した。「今は楽になったし、気分もいいんです」。彼はそう話す。「それでも、ネガティブな感情というのはふとした時に訪れます。そういった感情は隠すのではなく、口にすることで誰かと話し合うことが大切だと思う。どんな感情を抱えていても、僕はそれを表現するだけの覚悟が常にできています」

グループいち明るい性格の持ち主であるJ-HOPEは、メンバーたちから愛されるムードメーカーだ(「J-HOPEなら世界の大統領になれるんじゃないかな」というVのコメントに、RMがこう付け加えていた。「少なくとも、僕たち6人の票は得られるでしょうね」)。J-HOPEは突出したスキルを持つダンサーだが、訓練生だった頃にメキメキと力をつけた彼のラップスタイルは驚くほどアグレッシブだ。「僕がトレーニングを始めた頃、他のメンバーは全員ラッパーでした」。彼はそう話す。「教室に入るとビートが流れていて、誰もがフリースタイルでラップしていました。慣れるまでは少し苦労しましたね」

元々は演技の勉強をしていたJINは、単にルックスがいいという理由で、Big Hitのスカウトマンから路上で声をかけられた。今では確かな音楽的スキルを身につけた彼は、自身の容姿が取り沙汰されることへの冷やかしをむしろ楽しんでいる。「はっきり言って、僕はとんでもなくモテました」。最近出演した韓国のバラエティ番組内で、彼はそう語っている。その一方で、彼は自信に欠ける部分もあるという。「僕には欠点が多いんです」。彼はそう話す。「他のメンバーは一度のレッスンで振り付けを覚えて踊ることができますが、僕にはできない。だから他のメンバーの足を引っ張らないよう、僕は人一倍努力しないといけないんです」

ジャズとクラシックとエルヴィス・プレスリーが大好きで、特徴的なバリトンボイスの持ち主であるVは、オーディションに参加した友人の応援に駆けつけたところ、Big Hitの訓練生として迎えられることになった。BTSが2013年6月にデビューするまで、彼は数々のビデオブログやオンラインプロモーションに一切登場しない「影のメンバー」だった。

「今でもよくわからないんですよ」。彼は笑ってそう話す。「何のために、どういうコンセプトがあってのことだったのか、まったく理解できていませんでした」(シヒョクはその疑問にこう答えている。「BTSというチームが完全な形になったことを発表する前に、世間の期待を膨らませる必要があったんです。Vはルックスとパーソナリティの両面で魅力的でしたから、インパクトを生むために最後に発表するべきだと思いました。グループ全体のイメージを形成することと、各メンバーの個性について知ってもらう上で効果的な戦略だったと思っています」)。

加入前からダンサーとしてのトレーニングを受けていたJIMINは、BTSの中でも屈指のハイトーンボイスの持ち主だ。また、彼は何かにつけて完璧志向である。「僕にとって、ダンスは自分だけの世界に没入する手段でした」。そう話すJIMINは、非の打ち所のないパフォーマンスはBTSのファンがあってこそだと考える。「彼らのひたむきな情熱に応えるためにも、ミスを犯すわけにはいかないんです」

彼はチームのメンバーたちとの間に、強い絆を感じている。「BTSはまるで異なるパーソナリティの持ち主が集まって生まれたグループです」。JIMINはそう話す。「もちろん、当初は口論が絶えませんでした。でも多くの時間を共に過ごすうちに、以前は苦手だったメンバーの特徴が魅力にさえ思えるようになりました。共に過ごした時間が互いの距離を近づけ、家族のような絆が生まれたんです。どこに行こうとも、いつだって自分が帰るべき場所。今の僕にとって、このグループはそういう存在なんです」

RMが2017年にラップ・モンスターという当初のステージネームから正式に改名したことは、その名前が自身の実直なイメージと結びつきにくいからだろう。彼は取材の場でニーチェや抽象画家のキム・ファンギの言葉を引用したり、レアなファインアート本の再版を実現させるために、26歳の誕生日に約8万5000ドルをある博物館の基金に寄付するような人物だ。二重もしくは三重の意味を持つライムを次々と繰り出すRMとSUGAのスキルは、BTSの存在を気にかけたことのなかったアメリカのラップリスナーたちを驚かせたが、彼らが韓国語を理解できるか、その意味をオンライン翻訳で調べれば、さらに大きな衝撃を受けるはずだ。「言葉の壁を避けて通ることはできないですからね」。そう話すSUGAは現在、英語力の改善に日々努めている。

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Translated by Masaaki Yoshida

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