Lucky Kilimanjaroがメジャー3枚目のアルバム『TOUGH PLAY』を発表した。ボーカルの熊木幸丸を中心に、大学の軽音サークルで出会った仲間で結成された6人組で、結成時から掲げていたバンドのテーマは“世界中の毎日をおどらせる”。「シンセを使ったバンドってかっこいいなというところからスタートした」(熊木談)というように、イメージ的にバンド・サウンドに重心を置いたダンサブルなロックバンドなのかと思いきや、彼らのライブを初めて観た時に味わった自由な感覚は、クラブ・ミュージックの浮遊感に近かった。今回、Rolling Stone Japanではダンス・ミュージックを切り口に、リスナーを踊らせるために考えたこと・実践したことを熊木に聞いてみた。【写真を見る】Lucky Kilimanjaroの熊木幸丸
ー熊木さんのダンス・ミュージックの原体験というと何になるんでしょうか?熊木:徐々にそういう音楽が好きになっていった感じなので、「ダンス・ミュージックの原体験」というと難しくて。僕がLucky Kilimanjaroをやるときにかっこいいなと思ったバンドは、パッション・ピットとフレンドリー・ファイアーズ。どちらもサマーソニックで観てるのかな。彼らをきっかけに、ダンス・ミュージックやトライバルなリズムに影響を受けて、Lucky Kilimanjaroが始まったんです。その後、ジェイムス・ブレイクやディスクロージャー、UKのポスト・ダブステップとか、ハウス・ミュージックがすごく好きになって。ディスクロージャーを確か恵比寿のリキッドルームで観て、ジェイムス・ブレイクの来日も観てるんですけど、そのへんからバンドものからDJやプロデューサーがつくるダンス・ミュージックの方向に、かなり興味が湧いていったんだと思います。そんな一連の自分の心情の変化が、自分の原体験にあるかなという感じはあります。
—入口はバンドだったんですね。熊木:当たり前に自分がずっとギターを弾いて、バンドで表現していた状況だったので。バンドでやることが、手法として、自分の中でホーム感があるというか。まずはバンドでしょ、みたいな感じでしたね。
—高校生の時はハードロックを聴いてたんですよね。ヴァン・ヘイレンとか。その頃はダンス・ミュージックはまったく聴いてなかった?熊木:そうですね。大学に入って、ピッチフォーク(音楽レビューサイト)を全部チェックしてるような先輩がいて、その人にいろいろ教えてもらって徐々に知識を増やしていったので、高校の時は聴いていなかったですね。
—その先輩との出会いが大きかったんですね。熊木:大きかったですね。音楽オタクというか、凄く詳しい先輩だったから、僕がこうやっていろいろアウトプットできるきっかけになってるなと思います。
—ハードロックからヘヴィメタルには行かなかったんですか?熊木:例えば、いわゆるラウドロック、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、リンプ・ビズキットみたいなバンドや、あとはスリップノット、マイ・ケミカル・ロマンス、フィンチとか、そういうバンドも好きだったんですけど、感覚としてはハードロックの方が好きでしたね。
—そういう激しめの音楽を好きだったことが、今こういう音楽をやっていて強みになってるなって感じる時はあります?熊木:例えばフライング・ロータスみたいなちょっとエクスペリメンタルなジャズを聴いた時も、そんなに抵抗がなかったので、そういうインプットに対しての抵抗感は既に無かったと思います。不気味だな、とか思うこともなくインプットできるようになったという意味では、当時の音楽体験が大きかったと思います。あとは、ギタープレイが割とできるようになったなっていう(笑)。
—そうですよね(笑)。熊木:めちゃくちゃ歪ませてディレイとかリバーブをかけた、ギターソロ的なアプローチの考え方が自分の空間の表現の中で生きてるなと感じたりはします。自分の中で、ディレイを噛ませながらリバーブを噛ませることが当たり前だったので。例えばシンセでもそういうエフェクトのかけ方は使えますし、ギターソロ的概念が当たり前にできるようになったなという感覚がありますね。
—なるほど。自分もメタルやハードロックが大好きだったので、例えば「ジェイムス・ブレイクの低音がヤバイ!」って言われても、エクストリームな音楽でそういうのを体感しているので、「低音のヤバさに関してはそんなに騒ぐほどでもないのではないか」みたいなヒネくれた見方をしてました。熊木:そういうところはあったと思いますね。ちなみにLOUD PARKで観たナイルのライブ、低音がすごくて具合悪くなりそうになったことがあります。あとはフローティング・ポインツを観た時もキックの低音がやばいなって思いましたね。もう物理で殴ってきているような低音(笑)。青木孝允さんをWWW Xで観た時も、ジョン・ホプキンスを観た時も、「うわぁ、音で殴ってきてんな」って感覚があった。でもそういうのに対して抵抗はなかったですね。それはもしかしたら、ハードロックとかが好きだった経験からきてるのかもしれないです。