Lucky Kilimanjaroが語る、ダンス音楽から学んだアプローチと「遊び」の姿勢

BPM130の壁

—アルバムの冒頭を飾るにはぴったりな曲ですよね。さっきの「ぜんぶあなたのもの」もそうだけど、声ネタが入ってくることによってまたガラッと雰囲気が変わってくるシーンもいくつかあって、そこがアルバム全体を通しての面白いポイントだなって思いました。あと終盤の「Headlight」は、映画だとクライマックスの感動的なシーンで流れるような曲ですよね。その曲がアルバムというパッケージの終盤に入っているのがいいというか。

熊木:今回のアルバムは全体的にドライでブライトな感じのサウンドを作っていて、ウェットな感じが少なかったんです。でも、そういう部分があってこそのブライトな部分だなって。自分ももともと、ポストロックとかエレクトロニカとかが好きで、そういうエモーショナルな部分、自分の内省的でちょっと暗かったりする部分も含めて、ちゃんと落とし込まないといけないなという気持ちはずっとあって。「Headlight」という曲も「I’m NOT Dead」と同じように、このアルバムを象徴している作品だなと思っています。



—他のインタビューでも、映画監督っぽい感覚で曲を作ってるところがあるかもしれないって話してましたけど。

熊木:そうですね、やっぱりストーリーが大事ですね。作品もそうですけど、どういうふうに入り込んでいけるかというストーリーはすごく大事にしています。

—創作のアイデアは普段からいろいろメモしてるんですか?

熊木:僕のToDoリストみたいなものがあって。そこに気になるテーマとかがあったら書いて、作品に連鎖させるようにしています。なんとなくこういうジャンル感とかサウンド感がいいんだよな、みたいなものを書いて、意味的に繋がるようなものはくっつけて、あとでそれに着手していくことが多いです。例えばカルヴィン・ハリスとか2010年前後くらいのEDMって、僕が好きな90年代のピアノハウスとかから影響を受けていて、それがパリピみたいな文脈で消費されちゃったのがもったいないなと思っていたので、それを改めて日本のポップスの真ん中からハウス・ミュージックで攻めたら面白いのかなって思って「果てることないダンス」を作ったり。ToDoリストには「なんとなく90’sハウス、絶対KORG M1ピアノ使う」とか書いて(笑)。



—(笑)ハウス・ミュージックの話、もう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか。

熊木:もっと面白い消費の仕方があったんじゃないかと思います。その時の消費の仕方が嫌だったということじゃなくて、音楽に対しての解釈の仕方にはまだまだ幅がある。EDMに対しての視点は、まだまだ日本においては発展途上、もしくはほとんど始まってないんじゃないかとすら感じていて、スタートはそういうところからですね。日本だと多分FPM(Fantastic Plastic Machine)さんだったり、そういうハウスの時代はあったと思うんですけど、そこからのハウス文脈って大きいところではほとんどないので、自分がやりたいと思っています。



—Lucky Kilimanjaroの音楽を通して、海外の音楽の面白さを日本のリスナーに提案していきたいなという思いはあるんですか?

熊木:自分の音楽を通して海外の音楽にもっと触れて欲しいとかクラブに行って欲しいっていうのは、実はそんなにないというか、そこをメインには考えていなくて。音楽ってこういう楽しみ方があるんだよって提案することで、自然とそこに興味がいくようになると思うので、純粋に楽しみ方を提案していきたいなという感覚はありますね。それこそ、BPM115とか120前後、ディープハウスくらいのハウス感で、フェスで踊るのってすごく楽しいって思うんですよね。BPM130超えなくても、全然踊れるんだぞって感覚が当たり前になってくれたら、日本のポップスとしてもこの先新しい面白い音楽が絶対出てくると思います。

—リリースもライブもコンスタントにあるし、フェスやイベントにも出ていくし、今年は忙しくなりそうですね。楽しみにしてます!

熊木:飛躍したいというか、丁寧にコミュニケーションをとって、そのコミュニティを大きくしていって、いつの間にか音楽で踊っているのが当たり前になるのが理想というか。急に何かを排して革命を起こすのではなく、徐々にプレゼンスが上がっていく感覚でやるべきだなと思っているので。現場も含めてどんどん取り込んでいきたいですね。



<INFORMATION>

『TOUGH PLAY』
Lucky Kilimanjaro
Dreamusic
発売中
https://lnk.to/lk_toughplay

1. I’m NOT Dead
2. 踊りの合図
3. ZUBUZUBULOVE
4. 果てることないダンス
5. ぜんぶあなたのもの
6. 無敵
7. 週休8日
8. 楽園
9. 足りない夜にまかせて
10. 無理
11. Headlight
12. 人生踊れば丸儲け
13. プレイ

Lucky Kilimanjaro presents. TOUR "TOUGH PLAY”
5月28日(土)福岡・DRUM LOGOS
5月29日(日)広島・CLUB QUATTRO
6月4日(土)大阪・Zepp Osaka Bayside
6月10日(金)北海道・札幌PENNY LANE24
6月12日(日)宮城・Rensa
6月17日(金)愛知・Zepp Nagoya
6月19日(日)神奈川県・パシフィコ横浜
http://luckykilimanjaro.net/

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE