Lucky Kilimanjaroが語る、ダンス音楽から学んだアプローチと「遊び」の姿勢

「いろんなことをしたい」からこその緻密さとブレない姿勢

—話を聞いていて、そういうバンドならではの親密感みたいなものもサウンドに作用しているのかなって気がします。今回のアルバム『TOUGH PLAY』のテーマは「オリジナルであること」「リズムが自由であること」「バラエティに富むこと」とのことですが、それらを串刺しにする熊木さんのボーカルのフロウがすごくいいなと思いました。ご自身的にはどうですか?

熊木:純粋な楽譜の記号ではない、楽器としての“歌”というところで、できるだけ機能させたいという思いがあるので、自分の声で感情を表現したりリズムを表現したりすることはすごく大事にしているところではあるんですけど、正直なことを言えば、まだまだですね(笑)。ようやくスタート地点、くらいの感覚でやっています。自分では感情を表現しきれていないという感覚はやっぱりあるので、まだまだやりたいなと思っています。



—リズムの表現に関して新しいチャレンジは何かありましたか?

熊木:リズムの面でいうと、去年のアルバム(『DAILY BOP』)で、自分の今までの発声方法には限界を感じていて、みんなが踊ろうと思わなくても自然に踊れるものを作りたかったので、リズムの捉え方を変えないといけないんだなって思ったんです。トラックも含めて、グルーヴってなんだろう、どうやって伝えるんだろうというところはかなり試行錯誤して、楽曲を作りました。

—そういう検証作業って、具体的にどうやるんですか?

熊木:本当にいろいろです。キックとスネアを打ち込む段階なのか、それともそのちょっと前なのか、どこのレイヤーでリズムを考えなくちゃいけないのか。そういう検証を順々にやっていく感じです。ドラムが出来上がった後にリズムがよくなるとは僕は思わないので。最終的には自分の中に、この曲はこういうリズムの流れが欲しいって、何も楽器がない状態で芯の部分をイメージできてないとリズムもよくならないな、とか、そういう検証をしてますね。

—それは、己と向き合う作業というか。

熊木:僕の場合は歌の先生が、海外を何百回も行ったり来たりして、いろんなことをやっている先生だったので、向こうの人のリズムの捉え方みたいなものを教えてもらったり、それを自分なりに解釈し直して、トラックにも生かして、ひたすら向き合ってます。作ってる最中は、いいのできてるなぁ、って感覚が当然あって。でも終わったあとは大体、伸び代だらけじゃん、みたいな感じです。

—アルバムのリリースペースも早いですよね。前作の『DAILY BOP』からほぼ1年ですし。その間にシングルもあって。

熊木:お客さんと対話し続けて一定のコミュニケーションを取ろうと思うと、リリースペースはある程度の速度が必要だなとすごく感じています。作品をリリースする度に、僕がいろいろな方向から「踊る」って言い続けることで、踊るっていう文化が積み重なるという思いがあって。あとは、やりたいこととかアイデアが出てきたら僕は手をつけるしかないので、その結果、アルバムとして出たという感じですね。シングルでもなんでもいいんですけど、曲数的にアルバムだよねっていう。ある種、ミックステープ的というか。自分の中で今の気持ちがこういうふうにまとまっているから出す、みたいな感じで、別にすごくこだわりがあるというより、好きなようにやったらこれぐらいになったって感じですね。

—そうそう、ミックステープっぽい感じはあるなと思いました。

熊木:アルバム全体としてはある程度サウンドのイメージを絞った方が、コンセプトとしては伝わるというのが、昨今のポップスのスタイルだなって思うんですけど、僕はいろいろなことをしたいから、その上で、そこに一本コンセプトだったり今自分が思っていたりするところで芯を刺している感じです。僕もストリーミングで音楽を聴くタイプなので、単曲で聴くことがすごくあるなぁって。そうなった時に単曲ごとに人のストーリーとくっつけられた方がいいなという感覚もあって、今はこういう作風が自分の聴くスタイルにも合っているし、作るスタイルにも合っているなと気づきが得られました。

—曲を作るスピードは速いんですか?

熊木:他の人がどれくらい時間かかるのかはわからないんですけど、もともとCMの仕事をやらせてもらっていたこともあって、それは速度がないと成り立たない仕事だったので、自分のアイデアに時間をかける分、事務的な作業を可能な限り減らすというところにすごくこだわっているんです。でも、じゃあすぐ完成するかといったらそうでもなく、めちゃくちゃボツにもしますし。1曲として完成するのはそんなに速くないかもしれないですけど、アイデアをまとめるスピードはちょっと速い方かもしれないです。

—他のメンバーにはどういう形で伝えるんですか?

熊木:とりあえず僕は、ワンコーラスなり、芯の部分ができたらメンバーに聴いてもらって。こういうことを伝えたくてこういうことをやってるんだけど、どう?って。それで、フィードバックをもらって、僕はこう思っていたけどこういう発想になるんだとか、そういうところを調整していったりしていますね。

—じゃあ、メンバーの意見によって変えることも?

熊木:変えることも全然あります。歌詞が変わったりとか。僕だけだとどうしても変に入り込んじゃう部分があるので。自分でも客観的に見れていないことが結構あって。そういう時にメンバーから意見をもらえると、ああそうか、なるほどなって気づきになりますし、すごく大事ですね。

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