『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』自身初の傑作アルバム誕生秘話

ボブ・ディランとスーズ・ロトロ(Ted Russell/Polaris)

 
ボブ・ディランのデビュー60周年を記念して、1963年の2ndアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』がアナログ・レコードで発売された。彼が自作曲で生み出した初のマスターピース、その誕生秘話に迫る。

「とても短い時間で多くの曲を書いたんだ」とボブ・ディランは『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』という傑作に至る、当時の創造性の爆発について語った。「当時はそんなこともできたんだ。まだ怖いもの知らずだったんだね。これまでに誰も気づいていないような何かに気づいたと思っていた。まだ誰も足を踏み入れたことのない、芸術という名のアリーナにいるような気分だった」

ディランの2ndアルバムは彼にとっての初の傑作であるだけでなく、ポピュラー音楽の制作方法においても画期的な作品となった。1962年のデビュー・アルバムでは2曲しか自作しなかったディランは、『フリーホイーリン』では「風に吹かれて」「はげしい雨が降る」「くよくよするなよ」といった名曲を含む全13曲中12曲を書いており、シンガーとソングライターの関係性を一変させた。しかも、辛らつな社会批評(公民権や核兵器による大量殺りくといった話題に取り組んでいる)からラブロマンスの機微まで、コミカルなトーキング・ブルースから物憂げな失恋まで、ディランの作品集にはめくるめく多様性があった。

あるフランス人DJからこのアルバムをもらったビートルズは、他の音楽がほとんど聴けなくなったという。「3週間パリにいた間、このアルバムを聴くのを止められなかった」とジョン・レノンは語っている。「僕らはディランに夢中だった」

Translation by Kuniaki Takahashi

 
 
 
 

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