!!!が語る波乱含みの新作、XTCやR.E.M.の影響、日本でのクレイジーな経験と若さの秘訣

 
XTCやR.E.M.への共感、ウィル・スミスの事件について

―「This Is Pop 2」という曲もありますが、これはまさかXTCとは関係ないですよね?

ニック:あるよ! XTCの「This Is Pop」を参照してる。彼らの曲は好きで高校の時よく聴いてたし、感謝を示す意味でそのタイトルにしたんだ。その曲を作っていた時はクラフトワークにハマっていたんだけど、レコード全体を、アウトバーンとかコンピューターとか、色々なテーマに捧げる彼らのあのアプローチが好きでさ。そういう抽象的なコンセプトと共にアルバムをプレゼンするっていうアイディアを気に入って、俺もそれを自分なりにポップ・ミュージックでやってみたいと思ったんだ。もっと言えば、クラフトワークが『Autobahn』でやったことを、自分もやってみようかなって。

―「This Is Pop 2」や「It’s Grey, It’s Grey (It’s Grey)」は、メン・ウィズアウト・ハッツとかオーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク(OMD)が活躍したシンセポップの時代も思い出す感じで、面白い曲でした。

ニック:ありがとう。OMDは、俺が初めてライブで見たバンド。デペッシュ・モードのオープニングがOMDだったんだ。OMDは大好きで、沢山影響を受けてる。未だに大好きだね。メン・ウィズアウト・ハッツは「The Safety Dance」1曲しか知らないな。いや待って、2曲だ! 「Pop Goes The World」っていう曲があるのを思い出した!





―まさに、「Pop Goes The World」を思い出したんですよ。その「This Is Pop 2」をはじめ、3曲にジョエル・フォードが参加していますが、これはダニエル・ロパティン(OPN)とのフォード&ロパティンとかで活躍してきたジョエルですよね?

ニック:イエス。でも俺たちジョエルのことは好きじゃないから、彼の話はしたくない。俺がそう言ったって書いていいよ(笑)。

―そこまで言わせてしまうなんて(笑)。ジョエルは何をやらかしたんですか?

ニック:最初は、レコード全体で彼に関わってほしいと思っていたんだ。でも、作業がめちゃくちゃ遅くてさ。それで、途中で彼とはもうやらないことにした。彼が既に作業に関わった部分で使用した箇所もいくつかあったから、クレジットにはちゃんと彼の名前を載せたというわけ。

―インディ・ロックにありがちな、ポップ・ミュージックを見下すような態度とは、あなたは無縁ですよね。マドンナもマックス・マーティンも大好き!というのが、あなたの基本姿勢で、かつてサクラメントでハードコアのシーンにいた人としては、珍しいタイプだと思います。インディ・ロックやハードコアの排他的な部分には、息苦しさを感じていたところもあったんでしょうか?

ニック:俺自身にも、ポップ・カルチャーに全く興味を示そうとしなかった時代はあったよ。特に90年代、ハードコアやパンクのシーンにいた時はそうだった。でも、ポップには人と人を繋げる良いところがあると気づくようになったんだ。それは、俺がどんな音楽を作る上でもやろうと心がけていること。良いポップ・ミュージックって、理由はわからないけど皆を惹きつけるし、否定のしようがない。受け入れざるを得ないんだよね。聴いていてとにかく気持ちがいいし、皆が素直にその曲を好きになる。その自然な魅力が素晴らしいと俺は思う。どうしても引き込まれてしまうあの力。どんな音楽でもどんなスタイルでも、その曲が良い作品であれば、それはどんな人にでも伝わる。どんなスタイルのサウンドに挑戦している時も、俺はそういう曲を作ることを目指しているんだ。



―最近R.E.M.の話をする人が少なくなったので、「Man On The Moon」は嬉しい驚きでした。あのカバーはどんな風にできたんですか?

ニック:さっき話したAbletonセッションの一つとして始まったんだ。まずラファエルが90年代のヒップホップみたいなリズムを作って、それを俺に渡してきたんだけど、何を乗せようかとあのリズムを聴いていた時、なぜか「Man On The Moon」が頭から離れなくなって。それで改めて歌詞を調べてそのリズムの上に重ねて歌い始めたら、それがすごく新鮮に感じた。それはただやってみただけで、本当はあとから自分でちゃんと歌詞を書き直そうと思っていたんだけど、この曲にこれ以上の歌詞を書くことは無理だなと思って、そのままキープすることにしたんだ(笑)。カバーをするには面白いやり方だとも思ったし、何かをコピーしながらも新しい何かを作り出すのはすごくクリエイティブだとも思った。そうやって作品が出来上がっていくのは、すごくエキサイティングだったね。

―あなたにとってR.E.M.はどんな存在?

ニック:彼らはもちろんスペシャルな存在。高校の時に聴いて、他とは違うなと感じたバンドの一つだった。彼らのディスコグラフィーには素晴らしい曲が沢山あるし、彼らは俺のヒーローと言っても過言じゃない。高校の時は、ライブも見に行ったんだ。あと、マイケル・スタイプのことはニューヨークのパーティーでよく見かけてたんだけど、すごくクールだった。彼らが今回のカバーを聴いて感想をSNSに投稿してくれた時は、めちゃくちゃ嬉しかったね。彼らのレコードを聴くと、高校時代を思い出す。鳥肌が立つこともあるくらい。R.E.M.の音楽って、聴くとすごくユニークな感情がわいてくるんだ。だから、あのカバーで今度は俺たちが彼らに興奮を与えることができたということは、俺にとって大きな意味があった。すごく誇りに思ってる。




―「Man On The Moon」はスタンダップコメディアン、アンディ・カウフマンについての歌なので、聴きながらクリス・ロックがウィル・スミスにぶん殴られた事件も思い出しました。あの件についてはどう思いました?

ニック:ウィル・スミスが殴ったのがアンディ・カウフマンだったらもっと大ごとになってただろうな(笑)。アンディ・カウフマンはクリス・ロックほど冷静になれなかっただろうから(笑)。俺はアーティストだから、アーティストの表現の自由だと思うかな。あれはクリス・ロックの表現の仕方なんだと思うし、俺はコメディが好きだから。でも同時に、誰だって人間なんだから、感情が爆発してしまうことは自然だとも思う。ウィル・スミスは最悪なことをしたって世の中が言ってるし、それに続いて色々言ってる人たちも多い。でも、俺は、確かにウィルはミスをやらかしたけど、それはそれで仕方ないと思う。誰だって間違いを犯すことはあるからね。

Translated by Miho Haraguchi

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