ハードコアを皆の手に YouTubeチャンネル「hate5six」の仕掛け人

ステージ上で撮影する理由

「できる限りステージ上で撮影しようとしてる」とシンは話す。「理由は2つあって、1つは臨場感が出るからだ。もう1つは、バリケードが設置されていないショーで特に顕著なんだけど、バンドとオーディエンスが互いのエネルギーを交換しているのがわかるからさ。ステージに駆け上がり、そのまま客席に向かってダイブするファンや、楽器を持ったままフロアに突っ込むパフォーマー。2つのエネルギーが交錯するステージ脇に陣取ることで、俺は文字通りのその媒介になろうとしているんだ」

「『こういうバンドがいて、当日のライブはこんな感じだった』っていうのが基本的なストーリーだ」と彼は話す。「でも同時に、俺は『当日のオーディエンスがどういう人々で、バンドにどう反応していたのか』を記録しようとしているんだ」

若いミュージシャンたちにとって、hate5sixで取り上げてもらうことは1つのマイルストーンとなっている。Drainのフロントマンを務め、複数のバンドでドラムを叩いているSammy Ciaramitaroは、所属するバンドHands of Godで2019年シカゴのフェスThe Rumbleに出演し、初めてシンに撮影してもらった時のことをはっきりと覚えている。「会場に着いてステージ上に彼がいるのに気づいた時、一気に緊張感が増した。ベストのパフォーマンスを見せるために、できる限りハードにプレイしようと思った」と彼は話す。「あれは間違いなく、俺にとってのマイルストーンだった。彼が撮った映像を数えきれないほど観てたし、ミュージシャンとしてだけじゃなく、ハードコアのいちファンとしてものすごく影響されていたから。緊張してたけど、俺たちみんな必死でプレイして、結果的に満足のいくショーができた。マイクの位置を直してた彼が俺の方にやってきて、俺らは拳を突き合わせた。すごく興奮したよ」

アンダーグラウンドで知らぬ者はいないhate5sixの影響力は、メインストリームにも及び始めている。去年、フィラデルフィアの激烈ハードコアバンドJesus Pieceのドラマーでシンの友人であるLuis Aponteは、hate5sixにアップされた動画を観たチャーリーXCXのチームに声をかけられ、彼女のSNLのパフォーマンスでドラムを叩いた。こういったケースでの功績が認められるべきだという意見に対し、彼は興味なさそうに肩をすくめる。「彼は才能あるドラマーで、既に注目されてた。彼のドラミングからはクリエイティビティだけじゃなく、素晴らしい人柄まで伝わってくるんだ」。シンはAponteについてそう話す。「人々がそのことに気づくのを、俺は後押ししただけだよ」



Translated by Masaaki Yoshida

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