SMエンターテインメントの敏腕プロデューサー、KENZIEが明かすK-POPサウンドの秘密

KENZIE(Courtesy of SM Entertainment)

KENZIEは<SMサウンド>というひとつの音楽ジャンルの形成に貢献した韓国出身のプロデューサー。メディアのインタビューに応じるのは約20年ぶりという彼女がローリングストーン誌に自身の音楽制作プロセス、K-POP業界の変化と未来などについて語った。

【動画を見る】KENZIEが手がけたNCT 127「Favorite (Vampire)」のMV

最初に耳を打つのは、透明感あふれる口笛のメロディ。甘美でセクシーなそのメロディは、緩急をつけながら「もっと近くにおいで」と言わんばかりにリスナーを誘惑する。と、グローバルグループ・NCT 127の「Favorite (Vampire)」は、ひねりの効いたトラップのグルーヴの真っただ中へとダイブし、ラッパーたちは痛みを伴う危険な恋の快楽を語る。メロディアスなオープニングとは対照的なこのパートのねらいは、曲の目玉であるコーラスを予感させること。すると次の瞬間、耳に残るリフレインが堰を切ったようにコーラスで戻ってくる。それはパワフルなアンセムとなってメンバーの甘い歌声が織りなすきらびやかなハーモニーを包み込む。

テンポの急激な変化や多様なジャンルのミックス、独創性あふれるインタールード、それらすべてを支配する歌唱——予測不能なプロダクションが目白押しの「Favorite (Vampire)」は、いろんな意味で韓国の大手芸能事務所・SMエンターテインメント(以下、SM)のトレードマーク的作品と言えるかもしれない。だが、それ以上にこの曲には、ある人の“指紋”が残されている。その人は、“SMサウンド”という独自のK-POPサウンドとテクスチャーを事実上その誕生から導いてきた。その人の名は、KENZIE。SM所属のプロデューサーおよびソングライターである彼女は、20年以上にわたって現在の私たちが知るところのK-POPサウンドを形づくってきた人物だ。



2000年代のはじめにSMに入所して以来、KENZIEは数多くの楽曲を手がけてきた。数百にもおよぶレパートリーのうち、少なくとも30曲は韓国の音楽チャートのトップ10入りを果たしている。“K-POPの女王”と称されるBoAから新人ガールズグループ・aespa(エスパ)にいたるまで、KENZIEはSM所属のほぼすべてのアーティストの楽曲制作やプロデュースを行なっているのだ(ここ最近はSM以外のアーティストも手がけ、活躍の場を広げている)。少女時代の「Into the New World」、EXOの「Monster」、Red Velvetの「Red Flavor」、NCT 127の「Limitless」など、KENZIEが手がけた楽曲は枚挙にいとまがない。大韓航空で旅をしたことがある人はご存知かもしれないが、機内安全ビデオのバックで流れているオリジナル曲もなんと彼女の作品だ。









KENZIEの音楽が巷にあふれている一方、その正体はどちらかというと謎に包まれている。メディアには滅多に姿を見せず、母校である米国マサチューセッツ州ボストンのバークリー音楽大学(1999年卒)のオンラインジャーナルに掲載されたインタビューを除いて、自身のキャリアについて一切語っていないからだ。だが、実物の彼女はクールで慎み深い。KENZIEは、シンプルでグラフィカルなTシャツにスクエア型の縁なしメガネというスタイリングで本誌のインタビューに応じた。ここ数年はミステリアスな存在とされてきたが、だからと言ってよそよそしい態度を取るようなことはしない。はにかみながらも温かみを感じさせるオーラを放ちながら、KENZIEは自身の発言に笑ったり質問の答えを探したりした。

Translated by Shoko Natori

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