-そうしたサウンドアプローチも含めて「こういうロックを待っていました」感が『Genesis』は半端なくて。音楽シーンに限らず、もしかしたら社会全体に対しての現状打破、何かを変えようとするアティチュードが本作にはあるから、聴いていて鼓舞させられるんですよね。ASH:今の時代に対しての思うところ。そこに対しての本音。例えば、なんとなく流布されている流行とか色使いに対して「え、本当にそれ良いと思ってます?」みたいな。自分の顔すらもみんなと同じようにしたり、本当は目が大きくないのに大きくしてみたり、輪郭も変えてみたり。ある種、虚構の世界でみんなで楽しく踊ったり、真似事をし合ったりしているけど、「それ、本当に楽しい?」みたいな疑問がすごくあって。多分、本当は虚しいし、寂しいと思うんですよね。でも、みんな、嘘をつかなきゃいけない時代だから、せめて俺らロックバンドは嘘をつかないでいたいなって。
-そうした想いも反映されていると。ASH:本音を言えば、敵が増えるのも覚悟の上で「嘘はつきたくない」と思った。例えば「そんなことを言う人だと思わなかった」とか言われるかもしれないけど、それはもう百も千も承知の上なので、全然言ってくれても構わない。今の時代にはパブリックエネミーがいないんですよ。公的なぶつける敵がいないから、ちょっとしたことで「その人、そんなに叩く必要ある?」と思うぐらいみんなで叩いてしまったりする。そういったプロパガンダみたいなところに対しての“宣戦布告”が『Genesis』にはいちばん強く示されていると思います。
-WANIさんは『Genesis』の仕上がりを聴いて、どんな感慨を持たれたりしましたか?WANI:「このバンドに入れてよかったな」と思いました。自分も音楽シーンに活気や覇気が物凄くあった時代を生きてきたので、またこうして今もこういうジャンルがやれていることはすごく嬉しいし、チルのような人に寄り添う音楽がトレンドとなっている時代の中で、寄り添うと言うよりかはぶん殴って叩き起こすような(笑)、それで「殴り返してこいよ!」と鼓舞するようなアルバムを創れたことは、すごく有意義だなと思いますね。
WANI-WANIさんは、ASHさんに押し掛けられてバンド入りを決意したわけですが、そこまで求められた理由が『Genesis』には詰まっていますよね。WANI:あのときは「バンドで売れる」という夢を諦めて「サポートミュージシャンとしてやっていこう」と思っていたので……。
ASH:それなのに、俺、家まで押し掛けてるからね。WANIさんが言うように、ぶん殴って叩き起こすようなアクションをそこでもしているんですよ(笑)。
WANI:それで叩き起こされて「やってやるよ!」みたいな(笑)。そしたら自分の大好きなジャンルでドラムを叩かせてもらえて『Genesis』のようなアルバムが創れたわけですからね、純粋に嬉しいですよ。あのとき誘ってもらって、このバンドでやっていこうと決断したことは、まったく間違いじゃなかった。