ASH DA HEROがメジャーデビューアルバムで提示した「ロックとは?」への回答


-Dhalsimさんは『Genesis』の仕上がりを聴いて、どんな感慨を?

Dhalsim:何周も繰り返し聴いたんですけど、シンプルに「あ、自分がやりたかった音楽を出来ているな」と改めて思いました。僕はDJというポジションなんですけど、別にヒップホップに特化した音楽がやりたいわけでもないし、ずっとバンドマンとしてDJをやってきたから「バンドでDJってなんだよ?」とか「結局、君は何の人なの?」とか散々言われ続けて。それに対して「こういう人です」と説明できない自分もいたんですけど、今回『Genesis』を聴いたときに「あ、俺がやりたかった音楽はこれだ!」って確信できたんですよね。

-Dhalsimさんもまた、このバンドと巡り合うべくして出逢ったんですね。

ASH:DJというパートはロックバンドにおいて稀有な存在で、DJを取り入れていたとしてもステレオタイプのミクスチャーバンドが多いと思うんですけど、ASH DA HEROではそういう形に全然したくなくて。ニューメタルとヒップホップの融合みたいなバンドは、すでにいるし。なので、最初は「DhalsimのDJというエッセンスをどう落とし込むか、どう混ぜるか」試行錯誤だったんですけど、例えば「エゴイスト」という楽曲は「4人+DJ、4人+Dhalsimみたいな考え方はすごく失礼だし、Dhalsimという存在に対して4人がどんな色を投げたらどんな爆発が起きるのか。DJありき、スクラッチありきで作ってみよう」と思って、ひとつの解答を導き出せた曲なんですよ。

-なるほど。

ASH:そういう手法で創った曲もあれば、ロックバンド然としたアンサンブルの中のひとつのカラーとしてスクラッチを組み込む。リズム楽器でもあり、時としてメロディー楽器にもなるようなスクラッチをふんだんにぶち込んでもらった曲もあって。なので、ASH DA HEROを見て「ロックバンドにDJがいる。こういうバンドかな?」と頭の中でイメージする音楽があると思うんですけど、全然違うからちょっと覚悟して聴いてね!っていう感じ。先程のNaruくんの話と繋がりますけど、ありそうでどこにもない音を僕らは作れているという、確信と自信がありますね。


Dhalsim

Dhalsim:今、話してくれた役割を担うことが自分の仕事であり、持ち味であり、今ここに存在している理由のすべてだと思います。デモが送られてくる度に毎回「これ、どうしようかな?」と悩むところから始まるし、Naruさんから「今回の曲、隙間ないけど、頑張って」みたいな感じで送られてくることもあるんですけど(笑)、家中にあるレコードをすべて引っ張り出して、とにかく期待に応えられるよう懸命に取り組んでいます。

Narukaze:たぶん、Dhalsimがいちばん指針になるような道がないんですよね。ギター、ベース、ドラムはあらかた「こうしたらこうなるよね」みたいな指針がなんとなくあるけど、DJとかスクラッチはないに等しいと思っていて。で、僕の曲の場合は「スクラッチをここに入れてくれ」とか全く指定もせずDhalsimに一回送るんですけど、それはDhalsimの正解を見つけてほしいからで。指定しちゃうとイメージ通りのモノは出来るけど、仕事っぽくなっちゃうし、面白くないから。なので、Dhalsimはすげぇ大変だと思うんですけど、必ず自分で正解を見つけてきて、面白い曲にしてくるんですよ。

ASH:僕らの曲作りってあんまり和気藹々とした感じで行われるんじゃなくて、どちらかと言えば、ヒリヒリとした緊張感があって。今、Naruくんが話していたように「さぁ、どうする? おまえはこれに対してどんなアプローチで返してくる?」みたいなやり取りも結構あるんですよね。そこに良い高め合いが生まれる。

Rolling Stone Japan 編集部

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