吉田拓郎、70年代に自ら幕を引き新しいことに挑み続けた40代の軌跡





1995年6月発売、拓郎さん40代最後のアルバム『Long time no see』から「永遠の嘘をついてくれ」、そして「君のスピードで」2曲をお聴きいただきました。

40代最後のアルバム『Long time no see』は海外録音だったんですね。1980年にロサンゼルスでレコーディングされた『Shangri-La』、そして1985年にニューヨークで行われた『サマルカンド・ブルー』。2枚の海外録音のアルバムがあるんですけど、この『Long time no see』は場所がバハマ、スタジオがコンパスポイント。ローリング・ストーンズとかボブ・マーリーが使うことで知られるようになったスタジオですね。

集まったミュージシャンが、ドラムがRuss Kunkel、ベースがLee Sklar、キーボードがCraig Doerge、ギターがDavid Lindley、ジャクソン・ブラウンのセクションというバンドがありまして、そのメンバーが中心だったんですね。しかもバハマに1軒家を借りて、彼らはロサンゼルスから来て合宿してたんです。更に、ニューヨークから和食の料理人を呼んで、みんなで食事をするという、そういうレコーディングでした。なんでそういうレコーディングをしたかというと、自分が若かった頃に憧れて、今でも現役の人たちと一緒に音楽を作りたいということでした。

音楽人生の40代最後、50代を迎える前に、もう1回ピュアな形でやり直したい、確かめたいということで、そういうレコーディングだったんですね。このセクションも当時解散状態で、このレコーディングでみんな改めて集まった。メンバーのインタビューもしてるんですけど、Russ KunkelもDavid Lindleyも、これは俺たちにとってもリユニオン=再会なんだという話をしておりました。

このアルバムで初めて詞曲を頼んだ相手が、中島みゆきさんだった。それが「永遠の嘘をついてくれ」ですね。「永遠の嘘をついてくれ」はみゆきさんにとっての拓郎節でしょうね。その後にお聴きいただいた「君のスピードで」は、当時拓郎さんが一番納得していた、この曲が書けて本当に嬉しいと言っていた曲ですね。人を好きになるということを、こんなふうに肯定的に歌った。30代までは少なかったです。

50代を迎えて、今までやってなかったことをやりたいという話が出ました。それがテレビだったんです。初めてレギュラーの音楽番組を持つようになりました。そのテーマをお聴きいただきます。



初めてのテレビのレギュラー音楽番組「LOVE LOVE あいしてる」の主題歌「全部だきしめて」。ここでKinKi Kidsと出会ったわけですね。拓郎さんは40代後半ぐらいからずっと、若い奴は嫌いだって言ってましたからね(笑)。番組が始まった当時、フォーライフレコードや事務所のスタッフとスタジオで立ち会ってましたけど、辞表を懐にスタジオに通ってましたね。テレビ局のエンジニアの人たちと意見が合わなくて、エンジニアの人たちが何人も変わりました。そしてプロデューサーの菊地さんと、俺たちの音楽はそういうもんじゃないんだ、俺たちの音楽は生き方なんだという話をしていた記憶があります。それが人生を変えた出会いになった。50代の拓郎さんが始まり。来週に続きます。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE