ASH DA HERO、ツアーファイナル東京Zepp DiverCityで奏でた希望の歌

そんな宣戦布告のナンバーから曲が「DAIDARA」へと続く中で、メンバー全員が激しいライブ・パフォームを繰り出しながら、気合いの入った音を炸裂させる。見た目でも音でもベイビーズを煽りたて、最高の加速度で熱気は高まっていった。そこからロカビリー・テイストある「Avengers」や、バンド始動後に初めて作ったナンバーでもある「Merry Go Round」など、アルバム『Genesis』を軸にしながらライブは展開していく。

もともとソロ時代から音楽的に幅広いものを具現化していたASHを筆頭に、いろいろな音楽的バックボーンを持つメンバー。それに様々なアーティストのサポートやレコーディングでも手腕を発揮してきたメンバーも多い。2021年に始まったばかりのASH DA HEROであるが、新人らしからぬキャリアを持つツワモノが揃っているバンドと言える。プロフェッショナルゆえ、当たり前に演奏はうまいし、出す音そのものがいいところも、さすが実力派のメンバーたち。


ASH DA HERO(Photo by 堅田ひとみ)

だが、サポート経験が長くなると、主役を盛り立てる影武者的な考え方が強くなり、ついついバンドマンという本来の姿を忘れてしまうことも。ASH DA HEROが本物のバンドになるにあたり、まず必要だったのはメンバー一人ひとりの自分革命だったように思う。バンドとしての初アルバム『Genesis』のレコーディング、バンドとしての初ツアー<ASH DA HERO LIVE TOUR 2022“Genesis”>などを経験していく中で、楽器陣は見事に己の殻を破った。

意識の違いはハッキリと音やプレイに現われていた。それぞれが遠慮することなく音やプレイ刺激し合い、ライブ・パフォームも全員が大胆不敵にして気迫にも満ち溢れる。だから各楽曲はアルバムやシングルというフォーマットからいい意味ではみ出しながら、ライブならではの激しい呼吸を繰り返し、新たな醍醐味も作り出す。大歓迎の変貌ぶりだ。多岐にわたる音楽要素を持った楽曲たちは、さらに活き活きとした生命力を放ちながらベイビーズたちも刺激しまくっていく。

ライブ中盤には10月22日(土)の仙台公演から演奏された新曲「自分革命」をプレイ。激しいラップに乗せて、再びバンドのもとに集まったASH DA HEROの5人が、夢に向けて力強く歩み出したその瞬間が描かれている。バンドを組んだごく初期に実は作られた曲でもある。そのときから約1年経ち、夢が少しずつ叶っている現実がここにある。改めてフロアを埋め尽くしたベイビーズを見渡し、メンバーを代表してASHはまず喜びの声をあげた。

「Oh,My God!! すげーいっぱい人がいる。今日ここZepp DiverCityを選んでくれた一人ひとりにブチ刺すライブをお届けしますんで」━━ASH

また、つい数日前にライブに関するレギュレーションが声出しOKに向けて一歩進んだことを知る音楽ファンも多いだろう。だが、この会場ではまだ声出しは許されていない。ASHは言葉をこう続けた。 

「声出せなくても、アッと声が出ちゃうぐらいのライブやるのがロック・バンドだと思うんで。俺達コロナ禍でエスパーになってるから、オマエらの出したい声、オマエらの心の中の声、全部、聞こえるから」━━ASH

ソロ時代のASH DA HEROの生き方と考え方を投影した「からっぽの街」や「未完成ストーリー」なども中盤では披露。葛藤し、もがいていた日々を映し出した曲でもある。しかし今、バンドのASH DA HEROが鳴らすのは、葛藤した末に切り開いた未来。そんなポジティブなエネルギーがすさまじく宿る楽曲となり、ベイビーズを勇気づけていく。

Rolling Stone Japan 編集部

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