DJ FUMIYA×熊木幸丸「リズムの探求者たち」

DJの現場、リスナーの環境

熊木 音楽の遊び心っていう点で、自分の中ではFUMIYAさんとファレル(・ウィリアムズ)が割と似ていて。ドラムの使い方とか、あえてチープにする感覚とか。不真面目を真面目にやる感じがすごくいい。どっちも僕の中ではすごく尊敬しています。

FUMIYA ファレルは一時代を築いたアーティストですよね。すごいシンプルそうに見えるんだけど……俺、以前(ファレルの曲の)データを見せてもらったことがあって。

熊木 え!

FUMIYA こんなにちゃんとやってるんだ!っていうのを、そりゃそうかって再確認した。すごい適当に打ち込んでそうなイメージがあったんだけど、キックとか4つぐらいレイヤーしてて。

熊木 そうなんですね。

FUMIYA ちゃんと意味のあるレイヤーなんです。ただ単純に低音を強調するというレイヤーではなく、存在感を助け合ってるキックのレイヤーだったりとか。そうだよな、じゃなきゃこんなカッコよくならないか、って。

熊木 僕も海外の人はサクサクっとやっているのかなみたいな意識がイメージとしては確かにあって。でも海外のプロデューサーの動画とか見ると、“うわ、めちゃくちゃ真面目にやってる!”ってことが多い(笑)。細かいところまでやってる。

RSJ FUMIYAさんはRIP SLYMEと並行してDJの活動も続けてますが、クラブミュージックシーンの移り変わりをどう感じていますか?

FUMIYA やっぱり大きく変わったのがデータになったところですね。 CDJは割と前からあったんですけど、それがUSBになったりPCになったりしたのが、俺の中ですごく変わりました。どっちがいいのかって言われるとちょっと難しいんですけど、基本的にはレコードの方が音がいいですし、PCでやると曲がありすぎて何をかけていいのか分からなくなる。あと曲を覚えられないんですよ。レコードだとジャケで覚えてるんで、酔ってても「次これかけよ」ってすぐ出てくるんですけど、PCだともう見えなくなってる(笑)。

熊木 (笑)。

FUMIYA 曲名なんだっけって出てこなくなったり。USBで曲をかけるっていうのが、自分の中ではすごく変わったなと感じますね。海外の売れてるEDMの若いDJとか、よく見ますよね。もはやDJって言っていいのかどうなのかっていう。あんちょこっていうか、“この曲の後にこれをかける”ってセット組んでるのか、もしくは全部一つに繋がってるか(笑)。

熊木 実は再生ボタン押してるだけってよく言われるやつですね。全部パフォーマンスで、ただ押してるだけなんじゃないかとか。

FUMIYA それでも何万人が盛り上がってるんで、いいのかなって思う部分もあります。DJで言うと、そのへんが大きく変わったところだと思いますね。だから今、逆にアナログオンリーでやるイベントとかが増えてきてるのかもしれないです。……って言いつつ僕もPCでやってるんですけど(笑)。でもやっぱ、レコードで買っときたいなって思いますね。いつかそういう時が来るかもと思って、いい曲はもう1回レコードで買いたい。サンプリングするのもレコードが多いですし、アナログはやっぱずっと買い続けるのかなって思います。

熊木 僕はアナログ持ってないんです。もともとデジタル派で、本もKindleですし。それでしか手に入らないものだけ物理で持つみたいな感じです。アナログは自分ではまだ手が伸びていない領域ですね。でもウェブ上では聴けないものだったり、味わえないものがたくさんあることは知っているので、どっかで入りたいなとは思ってますけど、今はまだサブスクで新しい曲を毎週聴くだけでも、全然刺激になるなって思います。

FUMIYA それがあるから俺も買わなくなっちゃった(笑)。ただブート盤で手に入らないものは買っておきたい、とかがたまにあって。もともと雑多な聴き方してたのに、サブスクやるようになって、もっといろんな音楽を聴くようになった。でもそれが刺激的で、毎日誰かのプレイリストを見ては、こんな曲あるんだって驚きもある。

RSJ リップの曲もサブスクがあった時代にリリースされてたら、また受け取られ方も違ったかもしれないですね。

FUMIYA かもしれないですね。サブスク解禁も俺たちは割と遅めだった気がします。今もやってない方いらっしゃいますよね。それはそれで人それぞれだと思いますけど、確かに、もっと早くそういうのをやればよかったのになとも思います(笑)。

熊木 僕の中で、今サブスクで新しくたくさん出てくる曲に、RIP SLYMEみたいなものは出てきていないと思っていて。どれだけ新しい音楽を聴いても、RIP SLYMEの音にはたどり着けない。だから結局RIP SLYMEを聴きに行くしかないんですよね。それは古いソウルとかも全部そうだと思っていて、その当時の文化は当時のメディアとかも含めて残るものなんだろうなって気もします。サブスクが出て、“これまでの曲が全部聴けるからオッケーだよね”って感じでもなくて。やっぱ当時の音は当時のメディアで聴くのが一番いいと思う。自分の中でRIP SLYMEはCDで聴いた方が感覚としてはしっくりくるんです。それはデータの違いなのかわからないけど、メディアが残ってるってことは、すごく大事だなと思います。

FUMIYA 俺も自分の音楽はCDで聴いてた。この間ちょっと仕事でリップの曲のデータを探したら持ってなくて。CD探してもなくて、買った(笑)。

熊木 (笑)。

FUMIYA その話を聞くと、CDで聴くのが正解なのかなって思いますね。

熊木 少なくとも当時の文化はそういうふうになってたということだと思います。例えば僕らはCDも出してますけど、やっぱりサブスクっていう環境に対して出してる感じがあるので、そういう意味で僕らの曲がアナログになるっていうのは、僕らの文化の外の話だなっていう感じはあります。

FUMIYA 例えば曲順とかもそういう考え方?

熊木 そうですね。いわゆるサブスクの聴き方みたいなのを意識してるわけでもないけど、どうしても曲間は短くなります。今まで例えば曲間を2〜3秒空けていたのが、その空白に耐えられなくて、ほぼクロスフェードかけてるみたいなやり方になったりとか。でもCDでも音楽を聴いていた世代ではあるから、アルバムっていうフォーマットで一周聴くことも大事にしたいし、そういう面白さは残さないといけないなと思って、ちゃんとアルバムで出したいし、CDで出したいなとも思っています。

FUMIYA 例えばイントロは入れないとか、そういう考え方もあるのかな、と思って。

熊木 全然あると思います。いわゆる歌始まりみたいなのもそうですし、リズムを見せたい時にブレイクビーツから入りたい曲もあるじゃないですか。僕は最終的にそうなるといいなと思っています。ドラムがめちゃくちゃ太いブレイクビーツ流してて最高、みたいな感覚がマジョリティになっても自分はおかしくないと思ってますし、絶対に面白いと思います。だから自分はそういうビートから始まる曲も作りますし、そういう気持ちよさを大事にしたいなと思っています。

FUMIYA なるほど。勉強になる。


Photo by Yuuki Ohashi

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