アヴリル・ラヴィーン来日公演 彼女が今改めてポップ・パンクを鳴らすことの意味


Photo by Kazumichi Kokei

アヴリルは「自由」と「解放」の象徴であり続ける


あれから20年。ポップ・パンク・リバイバルとY2Kリバイバルが世を席巻する中で、ライム病と闘う日々を音楽に昇華した6thアルバム『Head Above Water』(2019年)から変化を見せて、ポップ・パンク・リバイバルの立役者であるトラヴィス・バーカー(blink-182)のレーベル「DTAレコーズ」よりニューアルバム『Love Sux』をリリース。さらに、ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴ、ウィロー・スミス、スネイル・メイル、ヒュニンカイ(TOMORROW X TOGETHER)、日本ではロックシンガーとして時代の最前線にいるLiSAなどが、アヴリルからの影響とリスペクトを公言し、本人との共演やカバー演奏などを行っている。そういった流れの中で、アヴリルが現在のティーンエイジャーたちからも絶大な信頼と愛が寄せられていることを、この日の東京ガーデンシアターの風景は表していた。

当の本人は、音楽という文化の流れの中で上の世代と下の世代の中間にいる自分の立場を自覚しながら、それを心底楽しんでいるように見えた。ライブは、1982年にリリースされたジョーン・ジェット「Bad Reputation」のカバー(アヴリルのカバーは2008年にリリース)を用いたオープニング映像からスタート。セットリストとしては20年間のヒットソングとともに、夫であるモッド・サンもステージに登場して「Flames」や、blackbearをフィーチャリングに迎えた「Love It When You Hate Me」、マシン・ガン・ケリーとの「Bois Lie」、さらには今月リリースし日本で世界初披露となったヤングブラッドとのコラボ曲「I’m A Mess」を惜しみなく演奏。新しい世代の自由かつ個性的なスタイルで表現するアーティストたちから愛を受けながら、アヴリル・ラヴィーンとしてのオルタナティブミュージックをクリエイトすることができている今だからこそ、冒頭に書いた言葉が飛び出したのだろう。デビュー以来、ひとつのジャンルに縛られることや、ジャンルでタグ付けされることを拒んできたアヴリルが、今改めてポップ・パンクを自分なりに鳴らすことを決めたのは、ただリバイバルの波があるからという単純な理由ではなく、今の「ポップ・パンク」とはあらゆるジャンルをクロスオーバーさせたものであり「自由」と「解放」の象徴であるからなのだと、この日のライブが語っていた。


Photo by Kazumichi Kokei


Photo by Kazumichi Kokei

アンコールでは「Head Above Water」「I’m with You」を海や水中を表す映像を背負いながらソウルフルに歌い上げて、アヴリルの音楽性と表現・歌唱の幅を見せつけた。「I’m with you, Tokyo, Japan!」。その言葉と歌はまさしく、これからもアヴリルはレジェンダリー・ミュージシャンのポジションを保ちながら、一人ひとり心のそばで「あなたは最高だ」「あなたを大切にしなかったアイツは見る目がないね」と聴き手を肯定し続けることを約束してくれるかのようだった。

【画像を見る】アヴリル来日公演 ライブ写真(全13点:記事未掲載カット多数)



〈セットリスト〉

Bite Me
What The Hell
Complicated
My Happy Ending
I’m A Mess
Losing Grip
Flames
Love It When You Hate Me
(Hello Kitty)
Girlfriend
Bois Lie
Sk8er Boi
Head Above Water
I’m With You
Here’s to never growing up


アヴリル・ラヴィーン
『ラヴ・サックス:ジャパン・ツアー・エディション』
発売中
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