WurtSが語る、秘密のベールに包まれた「研究家×音楽家」の裏側

SF映画への憧憬

―「映画」「内面が見えるか否か」というのはまさにWurtSさんのEP『MOONRAKER』について深掘る上でテーマにしたかったところで。WurtSさんはこれまでもMVやオンラインライブでクラシック映画をモチーフにしていたり、楽曲も映画的に作られていたりしますが、そうやって映画と音楽を繋げるのはなぜ?

WurtS 映画だと別人格になれるし、僕自身が経験できてないものを映画から吸収しているという側面もあるので。いろんな人生を見るという意味でも僕にとって映画は大事で、それを音楽にしているのかなと。

―『MOONRAKER』は映画『007/ムーンレイカー』がモチーフになっていると思うのですが、今回その作品を選んだのはどうしてでしたか?

WurtS 『007/ムーンレイカー』は幼稚園くらいのときに見て、僕の中で初めて見た映画と言っていいほどで。『スター・ウォーズ』とかもすごく好きでずっとシリーズを見ていたんですけど、その世界観が好きなのであって、ストーリーについては理解できない頃に見ていたんですよね。『007/ムーンレイカー』は父が『007』シリーズが好きでボックスが家にあったんですけど、シリーズの中でも一番心に残っています。そこから家にポスターを飾ったりしていたので、自分にとって映画の中の憧れでしたし、最初の映画体験でもあったので、今回このタイトルにしました。僕の中で「ロマン」と思う映画で、僕の考えるロマンがある映画の言葉やものとかを歌詞に書いているというのもあります。

―大人になって見返したときに、『007/ムーンレイカー』のストーリーや映像表現にはどういった魅力があるとWurtSさんは感じますか。

WurtS どんどん映画を見る中で昔の映画を好きになっているんですけど、その中で『007/ムーンレイカー』はチープというか。「チープ」というといろんな捉え方があると思うんですけど、僕の中ではいいチープさで。『フィフス・エレメント』とかもすごく好きなんです。僕が思っているのは、SF映画を作ることによって、その映画から生まれるものがあるなということで。『フィフス・エレメント』にはガラケーを特化させたような携帯が出てきたり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも自動で紐を結んでくれる靴が出てきたりして、あのシーンがなかったらそういうものが生まれなかったかもしれないなと思える。もしかすると今作っているSF作品が今後の未来を作っていくのかなと。

―今回のEPは1stアルバム『ワンス・アポン・ア・リバイバル』からムードの変化を感じますが、そういったSF映画の魅力を音楽に落とし込んでみようという試みもあったと言えますか?

WurtS この楽曲たちはいつかのタイミングで出したいなと思っている2ndアルバムに向けて作っていたもので、その布石としてEPを出すというイメージなので、アルバムに向けての世界観作りの楽曲なのかなと。その世界観がSFで。『ワンス・アポン・ア・リバイバル』はキーワードとして「リバイバル」を出していて、過去に戻るイメージで作っていたんですけど、今年に関しては「未来」という軸で考えたくて。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいなイメージ。なので前作はどちらかというと、過去の楽曲とかからインスピレーションを得て作った楽曲が多いんですけど、今回に関してはより今っぽさ、プラス、さらにその先の音楽ってどんなものだろうということを想像しながら作りました。



―「その先の音楽」とは、具体的にどういったイメージをWurtSさんは持っていますか? たとえばタイトル曲である「MOONRAKER」には久保田慎吾さんがアレンジに入って、ヒップホップやファンクをWurtS流のダンスミュージック的ポップスに落とし込んだもので「こんなこともできるのか」と私はドキッとしたんですね。

WurtS 去年は自分ですべてを作ることによさを感じていたんですけど、今回に関してはアレンジャーさんに入ってもらって共同で作っていったものが半分あって、僕の中ではすごく変化したと思ってます。「MOONRAKER」は形にできるまで1年間くらいずっと「どうすればいいんだろう」と考えていたもので。ブラスを入れたいとか、ちょっと洋楽チックなアプローチをしたいとか、色々と願望があったんですけど、自分の得意な部分だけでは思っていた通りいかなくて。アレンジャーさんと一緒に完成まで持っていくことができました。

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