LiSAが語る、音楽が鳴る場所で、共に「最高潮」へ向かうために

託された「言葉」の広がりと、今だからこそ書ける「言葉」

ー「明け星」「白銀」「炎」と重厚感の強い楽曲群のあとに、この曲が空気を一変させる流れも最高ですよね。今回はLiSAさんも3曲(「シフクノトキ」「悪女のオキテ」「NEW ME」)の作曲に関わっています。1作の中で3曲というのは、過去最多ですよね。

LiSA:既存のシングル曲がアルバムの大きな軸を作ってくれたからこそ、新曲に関しては今何が必要かということを、自分が信頼のおけるアーティスト……堀江晶太くんとかPRIMAGICさんとか、自分が音楽を出力する上でパワーを増強させてくれる相手と一緒に、気持ち先行で作っていくことに注力できたような気がします。

ーその中でも、特に「悪女のオキテ」は終盤のキモになりそうな1曲。ここでも攻めのモードは続いています。

LiSA:「悪女のオキテ」はアルバムが大まかに出来上がったあと、「もうちょっと攻めてもいいかな?」と思って入れてみました(笑)。歌詞もかなり攻めた内容ですが、すごく楽しみながら書けました。

ー言葉や表現など、大人になった今の等身大といいますか、いい意味での余裕が感じられる。そのへんも以前と比べて変化しているのかなと思いました。

LiSA:確かに。20代の頃は「どういう表現をしたら想いが伝わるか」ということに対して、パワーを全部押し付けることで伝わると思っていたふしがあって。それが少し大人になったときに、一歩引くことや下手に手を出さないことで表現できることがあると感じられるようになりました。

ーそれこそ以前はいろんな現実と対峙して、その中で葛藤しながらも前進しようとする姿勢が見えていたところ、大人になったことで若いリスナーに対して「大人もこんな感じなんだから、未来を不安がらなくても大丈夫だよ」みたいに、説得力が増しているのかなと。

LiSA:なるほど……そのへんは、まったく意識的ではありませんでした。でも、自分自身が素直に作っていった結果がそう見えているのであれば、私自身がきちんと大人として成長できている証拠なのかなと思います。

ー作詞の向き合い方に関しては、20代の頃と比べて最近変化を感じることはありますか?

LiSA:20代の頃は泣きながら歌詞を書いていることが多かったです。自分の中の消化しきれない気持ちを歌詞にしていくような感覚がありましたけど、少しずつですが前を向いた状態で、それを消化して理解した中で歌詞と向き合うことが今はできている気がします。

ーそこの違いが、聴いたときの「カッコいい大人」像につながっているのかもしれませんね。もちろん、若い頃ならではの表現もそのときならではの魅力があるわけで。

LiSA:そうですね。昔は「もっとわかってほしい!」と思いながら書いていた気がします。それこそ、強い筆圧で「愛してる!」と書いていたような(笑)。それが今は、筆圧よりも綺麗な字で書いたほうが愛が伝わるなと、表現の仕方が変わったのかもしれませんね。あと、最近は歌詞で表現することがどんどん楽しくなってきました。

ーそれは、どう楽しいんでしょう?

LiSA:自分から出てきた言葉に対して、自分でキュンとしたりグッときたりすることが増えたからかな。

ーもしかしたら、ご自身の書く歌詞を客観視できるようになったでしょうか。

LiSA:ああ、そうかもしれないですね。「ちゃんと」と言ったら変ですけど、思いの強さだけで勝負しないというか、作詞をするということに意識がしっかり向くようになったからだと思います。

ー言葉やメッセージに対する責任をより強く感じられるようになったり、聴き手に届けたあとのことにまで意識が向くようになったということでしょうか?

LiSA:そうですね。そのときの感情だけで書いたものというのは、そのときの感情でしか歌っていけないんですけど、ソロシンガーとしてここまで11年の経験を得て、いろんな表現を持った歌詞を書けるようになったことで、その楽曲を歌う気持ちが変化していくことにも面白みを感じられるようになったというのもあります。感情任せで書いたいびつな作品もそれはそれで好きだし、すごく大切なものだと思っているんですけど、ほかの作詞家さんとか田淵センパイとか自分が信頼する人たちが私に託してきてくれたものって、もっと自分に広い気持ちを歌わせてくれるし、年齢を重ねてもいろんな景色につれていってくれる。そういう人たちのすごさに、今になって実感するようになったんです。だから、私もそういう人になりたい、そういう言葉が書ける人になりたいと思うようになりました。

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