森山良子特集、歌手活動55周年の歴史を自選曲とともに振り返る



田家:やっぱりこの曲から始まりますね。

森山:私にとってある意味因縁の曲みたいなところがありまして(笑)。曲を作る人間にはならないという強い意志を持っていたんですね。ずっと子どもの頃から描いていた想いがあって私は純粋な歌い手でありたい。ですからフォークの仲間と歌っている時もただ歌だけに参加して、それがうれしかったんです。でもラジオ番組の中でリスナーから詞を募集して、それにメンバーが曲をつけるコーナーがあって。私はその時どこかにトンズラしちゃったマイク真木のピンチヒッターで。モダン・フォーク・カルテットという真木のバンドの人たちが次から次へとその曲を作って「もう逃さない」と言うので、「いやいや私は逃げます」と言って逃げ回っていたんですけど、今日のノルマは果たさなきゃダメってスタジオに入って。そしたらスタジオの上に置いてあったスケッチブックの背表紙か何かに小薗江圭子さんの綺麗な詞が載っていたので、見ているうちに〈この広い野原いっぱい咲く花を〉って読んでいるような感じで「これでいい?」って言って。その日の収録が無事に済めば、あとはもう知らないって思っていたんですね(笑)。そしたらこの曲に次からリクエストが来るようになって「えー! むりむり!」とか言いながら、なぜか曲が独り歩きして、それでレコード会社の方もこれをデビュー曲にするということになったんです。いやいやって。本当に私にとっては出発点がどうあるかってことが、こんなに自分の人生を変えていくということがよく分かりました。

田家:思いがけないことですね(笑)。自分で曲なんか作らないと思っていた方が曲を作ることで始まる55周年特集という4週間でもあります。今日の2曲目、1967年8月発売「今日の日はさよなら」。

Rolling Stone Japan 編集部

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