森山良子特集、歌手活動55周年の歴史を自選曲とともに振り返る



田家:作詞・松山猛、作曲・加藤和彦。8枚組ボックスのDisc1とDisc2には50曲入っているんです。それを今週1週間で辿っているわけでこんなに無謀なことはないと思うのですが、ブックレットが素晴らしかったですね。

森山:すごいです! 私が知らないことまで書いてありました。あ、そうだったわ! って。

田家:こんなに私的なこともというのもあって、1971年1月に極秘結婚をされて引退をすることになって、レギュラー番組の最後の収録の日にお兄さんが亡くなった。

森山:NHKの「歌の祭典」というかなり大きな歌番組の司会をしていたんです、谷啓さんと2人で。最終日に兄が亡くなったんですね。それでちょっと気持ちもおかしくなってしまったような感じがありますよね。

田家:1971年12月に出産をされて、しばらくお休みをされていたんですよね。

森山:そうですね。もう歌を辞めようかなぐらい考えていたんです。あまりに私生活の中でいろいろなことがあったので、もうこのまま引退かなと思っていたんです。

田家:「遠い遠いあの野原」は復帰作だった。

森山:そうですね。強い強いみなさんのお誘いをありがたくいただいて、それでこの曲を歌ったんです。ここで「遠い遠いあの野原」を歌うのに私は地声で歌いたいんですよ。でも、本城さんとか周りの方たちは森山良子らしい高さの裏声で歌ってほしいって。私は一度辞めたから新しい自分になろうと思って「キーを下げさせてください」って言って、もっと自分が求めている音楽の方に近づいていきたいと思っていたんですね。それは時々ファルセットも使うけど実は地声で歌いたい想いを遂げたんですけど、後になって考えると、みんなのイメージ通りファルセットで歌った方が耳心地よくみなさんによく届いただろうな、森山良子らしかったんだろうなと思ったり。今聴いてそう思いました(笑)。

田家:でもこの「遠い遠いあの野原」の野原の中には「あの広い野原いっぱい」も歌われているわけでしょ?

森山:いろいろな積み重ねの中でこの曲が出来上がったと思うので、みなさんいろいろなことを思考しながら作り上げてくださったと思うのに申し訳ないなと思って。

田家:復帰作だったということですもんね。復帰されて次の曲は今日の7曲目、1973年7月発売のシングルから「ブライト・シャインズ・ザ・ライト」。アルバム『森山良子 in ロンドン』からシングルカットされました。

Rolling Stone Japan 編集部

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