2022年の年間ベストソングTOP100

10. Drake feat. 21 Savage, ‘Jimmy Cooks’

ドレイクのクラブミュージック・アルバム『Honestly, Nevermind』のラストを飾る楽曲。通称“6ゴッド”が、得意のリズムに乗せて21サヴェージと言葉をぶつけ合う。ドレイクが「ベイビー、スタイルはいいが、シリコンはいただけねぇ」と卑猥な言葉を並べれば、「ロゼイ(※訳注:リック・ロスの愛称)がレモン・ペッパーを手放せないように(※訳注:リック・ロスは自分で店を持つほどフライドチキンが好きだった。またドレイクとリック・ロスは「Lemon Pepper Freestyle」という楽曲でコラボしている)、俺は俺の銃と仲良くしている」と、21サヴェージが追い撃ちをかける。曲は、メンフィス・ラップをサンプリングしたイントロと、2人のラッパーそれぞれのビート・パートを盛り込んだ3部構成になっている。彼らは完全に自分たちのゾーンに入って、掛け合いを楽しんでいる。
— Mosi Reeves



9. Harry Styles, ‘As It Was’

ハリー・スタイルズの3rdアルバムからの1stシングル。変幻自在なポップスターが、危機的状況の下での人間関係の難しさに悩む心の内を語る。シンセの甘いサウンドが、彼自身の苦悩を覆い隠す。曲は、スタイルズが名付け親となったルビーちゃんの「ねぇハリー、おやすみを言いたいのに!」という可愛い不満の声から始まる。オープニングからブリッジ部まで、さまざまな思いが、ハリー曰く「高速インターネット」のスピードで頭の中を駆け巡る。「As It Was」は、とても鮮やかな絵画のようだ。一見すると全て順調のようだが、「いったいどんな種類のピルを服用しているのか?」と、徐々に不安が増してくる。 — Maura Johnston

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8. Beyonce, ‘Break My Soul’

何というタイミングだろうか! ジョニー・ペイチェックによる不朽の名作「Take This Job and Shove It」の精神を受け継ぐビヨンセのヒット作は、ますます移ろいやすい『ノマドランド』後の世界へ向けてリリースされた。まるで、2022年にTwitterから集団で離脱したエンジニアへ向けたメッセージのようだ。「Break My Soul」は、衝撃波のようにヒットした。ビヨンセがハウスミュージックに本気になったのかと言えば、答えはイエスだ。ロビン・Sの名曲「Show Me Love」や、ニューオーリンズのバウンス・ミュージックを代表するビッグ・フリーダの「Explode」(「Release ya job!」のフレーズ)をサンプリングしたビヨンセのヒット曲は、ポップミュージック全体をハウスへとシフトさせる役割を果たした。 — Michaelangelo Matos

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7. Pharrell feat. 21 Savage and Tyler, The Creator, ‘Cash In Cash Out’

21サヴェージやタイラー・ザ・クリエイターらオールスター・デュオが参加した「Cash In Cash Out」で、ファレルは強力な復活を遂げた。ファレル自身は歌もラップもせず、TR-808によるシンプルなループで、ただひたすらリズムを刻み続けている。淡々としたビート……彼の仕事はそれだけだった。21サヴェージが、「俺の分身を全部くわえ込む、彼女はいけないベビーシッター/俺のパンツの中は、キム・ジョンウンのミサイル並みさ」と、最高に下品なユーモアを放つ。一方で自身のアルバム『Call Me If You Get Lost』で勢いに乗るタイラーは、「ステージが俺のキャラに合わない」という理由で、数百万ドルのコンサートのオファーを拒絶する。さらに「俺は両方行ける、そうさ俺は“B-I”さ(※訳注:レコードの“B面”と“バイセクシャル”を掛けている)」と胸を張る。 — Rob Sheffield



6. Quavo and Takeoff, ‘Hotel Lobby’

クエイヴォと彼のおいのテイクオフが「Hotel Lobby」をリリースした時、彼らの従兄弟で同じくミーゴスのメンバーだったオフセットは、2人と決別してグループを既に脱退していたと思われた。しかし、再び元のさやに収まるまでの茶番だったようだ。2022年11月にテイクオフが銃撃されてこの世を去ると、クエイヴォとのサイドプロジェクトである「Hotel Lobby」は、悲劇の遺作として注目を集めた。アトランタ育ちの2人のラッパーは、NBAのゴールデンステート・ウォリアーズで活躍するスプラッシュ・ブラザーズのように、常に1対の存在として扱われていた。「ボビー(・ブラウン)みたいにダイヤモンドをジャラジャラ光らせて」とテイクオフが誇らしげに言えば、クエイヴォは「その銃をこっちへよこせ/一歩間違えば奴を撃っちまう」と警告する。彼らの楽しい騒ぎも、長続きしない運命にあったと思うと辛い。 — Mosi Reeves

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Translated by Smokva Tokyo

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