2022年の年間ベストソングTOP100

5. Rosalia, ‘Despecha’

ロザリアと話してみると、音楽のジャンルに関する知識の豊富さに驚かされる。音楽に対する純粋な愛情を抱く彼女は、常に新しいサウンドを追求している。2022年の『Motomami』ワールドツアー中にリリースした「Despechá」にも、彼女の一途な気持ちが表れている。「Despechá」はピアノによるマンボのリズムで始まり、アヴァン・ポップ風なメレンゲへと展開していく。ドミニカ発祥のダンス・スタイルをリスペクトする彼女の姿も強烈な印象を与えるが、彼女が目指す聖地へと導いたのは、彼女の歌声に込められた力強いエネルギーだ。アルバム『Motomami』は、彼女にとってのマイルストーンとなった。「Despechá」もまた、ロザリアのグローバル・ヒットメーカーとしての輝かしい未来を示唆している。 — Ernesto Lechner

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4. Taylor Swift, ‘Karma’

テイラー・スウィフトは「Karma」の中で、“アイム・スティル・ヒア”と歌った。自分が健在であることを示す証拠として、アルバム『Midnights』を、彼女の失墜を願う人々へ突きつけたのだ。「Karma」は、アルバムのヒットを決定づける宿命を背負った作品だと言える。確かにアルバムからの1stシングルは「Anti-Hero」で、「Maroon」も流行に敏感な人々の話題になっている。しかし「Karma」では、スウィフトの絶妙な歌詞と(ボーイフレンドだと比喩表現されていた“宿命(karma)”が、後半では文字通りより親密な関係になっていく)、長年のコラボレーターであるジャック・アントノフによるスマートでフレキシブルなプロデュース手法とが、見事に融合している。アルバムのトラックリストが解禁されると、一部ファンの間では、「Karma」と長い間噂されていた未発表アルバムとを結びつける声も上がった。しかし、イースターエッグを見つけ損ねた失望感も、強烈なリベンジソングによって吹き飛んだ。コンサートでのダンスの振り付けも、スウィフトらしく、曲を1度流しただけで自然と決まってしまうだろう。 — CT Jones

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3. Steve Lacy, ‘Bad Habit’

「Bad Habit」は、ヒットアルバム『Gemini Rights』のビジョンを示す代表的な作品だ、とスティーヴ・レイシー本人は表現している。本作品は知っての通り別離をテーマにした曲だが、同時に、ドキドキ感と頑張りと矛盾と共存を一度に経験する自分がいる。従って、アルバムのテーマソングとなった「Bad Habit」が、荒れたり静まったりする心を落ち着かせる光の役割を果たしているのも納得できる。レイシーの描く主人公は別れを受け入れながらも、よりを戻したがっている。主人公は自分にパワーがあると分かっているが、全てを発揮できないでいる。レイシーには、メランコリックな楽曲をこの夏の間ずっとグルーヴさせ続け、チャートのトップにまで押し上げるだけの音楽的才能がある。何ごとにも必ず理由があるのだ。 — Mankaprr Conteh

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2. Beyonce, ‘Cuff It’

アルバム『Renaissance』の中から1曲を選ぶのは容易いことではないが、「Cuff It」のインパクトは否定しようがない。シングルとしてもヒットした「Cuff It」の陽気なダンスの振り付けは、まるで伝染病のように広まった。また、曲順が重視されるアルバムの中で、最も印象的な場所に配置されている。直前の非現実的なエレクトロニック・ミュージックとは全く対象的に、陽気なこのトラック4のファンクは、すんなりと受け入れられる。リスナーは曲が始まると同時に、宇宙空間の幻想的なディスコへと飛ばされる。ファンクの最高の実践者であるナイル・ロジャースが作曲に参加し、ギターも弾いている。ビヨンセは、シックの伝説的メンバーによる魔法の手を借り、かつてのトレンドを現代に蘇らせて頂点に立った。 — Mankaprr Conteh



1. Bad Bunny, ‘Titi Me Preguntó’

バッド・バニーは、熱狂的なデンボウ・ビートに、バチャータの第一人者であるアンソニー・サントスの楽曲をおしゃれにサンプリングし、コーダ部にラテン・サイケデリアを融合させて、グローバルヒット作に仕上げた。さらに彼は、堂々と健全なユーモアのセンスを貫き通した。曲は、ラテンアメリカ出身のおばが、彼女のおいの女性関係を心配する典型的なシーンから始まる。するとプエルトリコ出身のバッド・バニーが卑わいな言葉を並べ立て、ノリの良いパーティーモードに突入する。バニーの得意なパターンだ。しかしそこから突然ムーディーな雰囲気に転換し、自らを戒める。アルバム『Un Verano Sin Ti』のどの収録曲にも増して、「Titi Me Preguntó」には、ベニート(バニーの本名)のとどまるところを知らないクリエイティビティーが発揮されている。彼は、ポップ界のエキセントリックな天才だ。 — Ernesto Lechner

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From Rolling Stone US. 

Translated by Smokva Tokyo

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