フォンテインズD.C.来日直前インタビュー 怒涛の一年とライブアンセム、アークティックとの共演

 
自分たちのアンセム、アークティックとの共演について

―昨年のアルバムリリース時にインタビューした際、ベーシストのコナー・ディーガン3世は「ポリシーとして常にあるのは、ライブで演奏できる曲ってこと。スタジオの外でも再現可能かどうかっていう、そこは今までもずっと一貫している」とサウンドについて話されていました。一方、『Skinty Fia』では、曲作りでLogicなどのソフトウェアが使われるなど編集作業も組み込まれ、インストゥルメンタル的な部分でそれまでの作品と比べて飛躍を見せた部分が多くありました。実際に『Skinty Fia』以降の楽曲をライブで演奏する際に、これまでとの変化を感じる部分や、意識的に取り組んでいる新たなアプローチなどあれば教えてください。

トム:ああ、そのアイディアはアルバム制作の面でも重要だった。ライブで演奏できるっていう条件下で、楽器を使用してエレクトロニックなサウンドを作ろうと試行錯誤を重ねたんだ。曲に対する姿勢は変えることなく、今まで慣れ親しんできたパンク的なエネルギーをより強固で明確なものにしていきたいって思っている。これは終わりのない自己追求だね。


Photo by Eimear Lynch

―日本のファンは2月の来日公演で初めてフォンテインズD.C.のライブに触れるわけですが、フォンテインズD.C.にとってのライブアンセム、プレイしていてオーディエンスとの一体感を最も強く感じることのできる曲は?

トム:自分たちの曲をアンセムって呼ぶことには本当に気が引けるけど、「I Love You」と「Jackie Down The Line」はオーディエンスとの一体感を感じられる要素があるし、自分自身も演奏していて楽しい曲だ。日本のオーディエンスがどのような反応をするか、実はとても楽しみにしてるんだ。来日公演は念願だったし、ライブが待ち遠しいよ!



初期のシングル「Boys In The Better Land」(2018年)もライブ定番曲

―2022年のツアーやフェスティバルにおけるベスト・モーメントを教えてください。

トム:そうだな……強いて言うならPrimavera Soundかな。去年最初のライブだったし、メインステージで演奏してこなかった僕たちにとっては特別なライブだった。あと、ロンドンのHammersmithとダブリンのVicar Streetの公演ではアットホームな雰囲気を感じられて、僕にとって大事な思い出になったよ。


Photo by Eimear Lynch

―ここまでの3枚のアルバムを通じて、飛躍と拡大を続けてきたフォンテインズD.C.の音楽ですが、この先どういった方向に進み、どういった変化を遂げていきそうか、現時点でどんな予感がありますか? どんな音楽が作りたいですか?

トム:目の前に曲の一覧がない状態で答えるのって難しいね。この質問に関しては、身を任せるしかないと思っている。ここ数カ月の制作を振り返っても、ただ楽しんでいるとしか言えないな。自分たちが楽しめるような音楽を作り続けてさえいれば、どんなものが生まれようとも不満には思わないよ。

―昨年、フォンテインズD.C.は「BIMM Dublin」という団体を通じて、アイルランドの若手の音楽家のための奨学金をサポートすることが伝えられました。この経緯、決めた理由や目的を教えてください。

トム:BIMMは僕たちがバンドを結成したカレッジなんだ。ミュージシャンを目指して、数年間色々と思い悩んだりした場所で、僕の起源と言っていい。BIMMから授業料を免除するための奨学金のサポートと、若い世代の才能あるアーティストを挙げてほしいと連絡があったんだ。ダブリンでミュージシャンを目指して、切磋琢磨している若いアーティストを支援できるなんて光栄なことだよ。今、ダブリンでの生活費の高騰は本当にひどい状況だから、こういった支援は今まで以上に意味を成すはずだ。


Photo by Eimear Lynch

―今年の夏には、アークティック・モンキーズとアメリカをツアーされるそうですね。彼らはフォンテインズD.C.の1カ月後に日本にも来るのですが、フォンテインズD.C.にとってどんな存在ですか?

トム:アークティック・モンキーズのツアーは僕にとって最大のピンチだ! ティーンの頃からずっと大ファンだったし、どのアルバムにも思い入れが強いんだ。そんなふうに公言できるバンドは滅多にいないから。アメリカツアーの規模といい本当に信じられない、夢みたいな話だよ。

―そういえば昨年、NME誌が選ぶ「世界のベスト・バンド(Best Band In The World)」に選ばれましたね。正直、そう言われてどんな気分でしたか? バンドとして「成功した」と感じるのはどんな瞬間でしょうか?

トム:あれはかなりおかしかったね。不愉快な名前の賞を貰えて光栄だよ(笑)。僕たちはこの手の賞に対して懐疑的なんだ。受賞するのは嬉しいけど、評価軸にするべきじゃないって思っている。

僕はバンドの成功について考えることが苦手なんだ。1年間ずっとツアーをしていたし、成功について考える時間なんてなかった。もし今後休むタイミングがあった時には、少し考えてみようかな。

【写真ギャラリー】フォンテインズD.C.の秘蔵ライブ写真(全22点、記事未掲載カット多数)




Fontaines D.C. Japan Tour 2023

2023年2月17日(金)大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
開場/開演:18:00/19:00
前売り:7,500円(スタンディング/ドリンク代別)

2023年2月18日(土)東京・渋谷 Spotify O-EAST
開場/開演:18:00/19:00
前売り:7,500円(スタンディング/ドリンク代別)

詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=3780



フォンテインズD.C.
『Skinty Fia』
発売中
再生:https://fontainesdc.lnk.to/skintyfia

Translated by Natsumi Ueda

 
 
 
 

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