ALIが語る、アナーキーな音楽と描きたかった世界

ーALIの演奏は大所帯ですけど、レコーディングはどのように行われたんですか。

LEO:演奏は全員一緒でせーので録りました。パーカッションも無理やり1部屋に入れて、後から直せないようにして。「愛すべきミスはありましたか?」みたいに聞くんです。ミスを愛せるように演奏してくれって。なので1曲につき2回録って終わりです。練習はいっぱいしますけど。

ー一発録りするにしても、だいぶ大きいスタジオじゃないと難しいですよね。

CÉSAR:音響ハウスっていう、テープでも録れる魔法がかかるスタジオで録ってるんです。

LEO:坂本龍一も忌野清志郎も録ったスタジオで。俺らが好きな第2スタジオで「LOST IN PARADISE feat. AKLO」も録っていて。



ー2020年の取材時、2枚組のアルバムにするかもとおっしゃっていましたが、その時思い描いてたものと今回のアルバムは違います?

LEO:全然違いますね。「売れるとみんな1本調子になる」って記事を何かで見て腹が立ってきて。1stアルバムって衝動が詰まっていたり、そのアーティストのやりたいことが入りがちじゃないですか? 俺らは1stアルバムだけど、その前にEPとかいっぱい出しているし、歴も長くやっているから、ちゃんとやりたいことをやろうと思って。CDの収録曲の限界分数を聞いたら、80分でも入るらしくて。ただ、80分まで入れちゃうと「何があっても知りませんよ」みたいな注意書きが必要になるみたいで。75分までは全然いけるっていうから、パツパツに入れようと思って、インストを初回版にいれたんです(笑)。一番アナーキーな作品になったと思っています。

ー映画風のポスターもいいですよね。最初、ジャケ写なのかと思いました。

LEO:これは遊びで俺がポスターを作ろうと思ったのが始まりで。今回、映画が『MUSIC WORLD』のテーマでもあるんですけど、自分なりに『MUSIC WORLD』を表現する手段として遊びで作ったら、みんな喜んでくれて。今、アー写の代わりになっています(笑)。ジャケ写のアートワークも全力でこだわって、いつも一緒にやってくれている康輔さん(河村康輔)がデザインしてくれています。

ー映画がテーマになっているというのは、どういう意図があるんでしょう。

LEO:俺が1番影響受けたものって、映画とかDJカルチャーなんですけど、現実に戦争が起きたり、コロナウィルス流行したり映画みたいな世界になってきている。そういった中で、自分の周りの景色をどうしても音楽で描きたかった。「MELLOW CRUISE」って曲は神戸のフェスの景色、「A NIGHT IN SAUDI ARABIA」はサウジアラビアに実際に行ったときの景色、「CLIMAX BULLETS」はロシアの友達の親戚が戦争で召集させられたとか、そういったものを現実として音の記録に残したいと思ったんです。音楽の大前提って、心を描くとか事実を描く、作り手が見た景色や魂を描くことが大事だと思って。今回は好き勝手にやるぞっていう確認のもと、非常に映画的な作品になったかなと思っています。ストリングスもテープで録ったり、すごく凝っていて。1曲目から歌でもなんでもなく、それを録るために歴史のあるスタジオで愛を込めてレコーディングしました。こんなアナキーなことをやるのは俺らだけだろうと思ったら、アークティック・モンキーズの新作もそういうアプローチで。歳が近いので嬉しかったし、だよな!みたいな。腹立つけど、俺1人じゃなかったか!って(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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