レディ・ブラックバードと盟友が明かす、「ブラック・アシッド・ソウル」誕生秘話

 
「ブラック・アシッド・ソウル」のルーツ

―『Black Acid Soul』というタイトルは誰がつけたんですか?

LB:それはクリス(笑)。

クリス:一緒に作業を始めた時から、僕たちは「ブラック・アシッド・ソウルを作ろう」って話をしていた。で、彼女がセッションをする度に、そのハッシュタグをつけていたんだ。そうするうちに、それが自然と僕ら独特の何かになって、タイトルになっていったんだ。

LB:あなたの頭に、その言葉が強く残ってたんでしょ?(笑)。その言葉をタイトルにしようという話になったとき、私もクールだなと思ったの。

―あのタイトルは、アルバムが成功した理由の一つだと思いますよ。

クリス:スクリーンライターの友人がいるんだけど、彼も同じことを言ってた。サブジャンルみたいに聞こえるから、そのジャンルを買うような気分でアルバムを聴いた人もいるだろうって(笑)。

LB:私たちも、自分たちが作る音楽は完全にサブジャンルだよねって最初から話してたしね。これまでもずっとそう。長いあいだ一緒に作業をして、トラックをたくさん作っていくうえで、私たち独自の音楽が生まれてきたわけだし。自分たちのサウンドを追求してきた結果、ここにたどり着いた。つまり、私たち自身がサブジャンルなわけ(笑)。


Photo by Kenju Uyama

―その「ブラック・アシッド・ソウル」なサウンドに影響を与えた作品はありますか?

クリス:スピリチュアルという面では、『Kind of Blue』や『A Love Supreme』(ジョン・コルトレーン)からインスピレーションを得たと思う。直接的にどうこうというより、古いソウル・チューンを自由で美しく、緩やかな空間に置いてみよう、みたいな感じだね。素晴らしいミュージシャンが素晴らしいスタジオでライブ録音したレコードと同じように、最高な曲のアイディアを見つけて、最高の仲間たちと一緒に、真のパフォーマンスをしたかったから。

―それらのアルバムは、マイルスのトランペットとか、コルトレーンのサックスが主役ですよね。つまり、必ずしもボーカル・アルバム的ではない音作りを心掛けたのでしょうか?

クリス:そうだね、セッティングは似ている。例えば「A Love Supreme」の冒頭みたいにね。ビッグなシンバルから始まるけど、その後、ベースとドラムが入り、コルトレーンが演奏するかわりに、シンガーと歌詞がその空間を埋める。コルトレーンのように、グループの人数自体は少人数というセッティングも同じ。人数が少なくてスペースはたくさんある中で、どのように曲を作り、それを表現するか。コードやハーモニーの選択だったりを、一つ一つ意識して曲を作り上げていく。それから、フォーカスしたものの周りにアンビエントなサウンドが広がっているのもそう。僕らの場合は、レディ・ブラックバードにフォーカスして、その周りに他のサウンドが存在している。そして、彼女の声にフォーカスが当たるのを助けるのがミニマリズムなんだ。



―クリスさんがプロデューサーとして、個人的に一番好きなアルバムは?

クリス:やっぱり『A Love Supreme』かな。ビーチまでドライブに行くときに聴くアルバムだから。早朝にビーチを散歩するんだけど、6時くらいに起きて、レディ・ブラックバードも誘ったりする。それで、歩きながら『A Love Supreme』を聴く。コルトレーンがあのレコードを書いた家が、僕の実家から5分くらいのところにあってね。僕はコルトレーン一家が育った場所のすぐそばに住んでいたんだ。だから、僕にとっては特別な場所なんだよ。今でも母に会おうと実家に帰るたびに、コルトレーンの家にも足を運ぶんだ。

LB:今は2ndアルバムを制作中で、そっちの方が「ブラック・アシッド・ソウル」により近いものになると思う。もちろん1stアルバムも誇りに思っているけど、前回はシングルの曲も集めてアルバムにしていったのに対し、今回は最初からアルバムを作るために作業へと臨んでいる。だから、帰国しないといけないの(笑)。もう少し待っててね。


Translated by Miho Haraguchi

 
 
 
 

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