日比谷野音に刻まれたヒップホップへの敬意と未来への創造、「FUYU NO YAON」総括

「FUYU NO YAON」Photo by ハタサトシ

2月18日、日比谷野外大音楽堂で開催されたヒップホップイベント「FUYU NO YAON」。まだまだ冬の寒さが残る野外にて、約5時間半にわたって20組以上のヒップホップアクトが登場するこのイベントは、25歳以下を対象とした割引チケットが早々とソールドアウトしたことが指し示す通り、10代から20代前半のオーディエンスが中心だった。

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野音とヒップホップといえば、1996年に開催されたイベント「さんぴんCAMP」が思い起こされる。キングギドラとして「さんぴんCAMP」に出演していたK DUB SHINEは「FUYU NO YAON」のライブ中に当時のことについて触れ、「さんぴんCAMP」主催のECD、続けてDEV LARGE(BUDDHA BRAND)、オオスミタケシ(SHAKKAZOMBIE)、MAKI THE MAGIC(キエるマキュウ)へ哀悼の意を表し、日本のヒップホップシーンの生き証人のような存在感を見せた。


K DUB SHINE(Photo by ハタサトシ)

K DUB SHINE with DJ OASISにバトンを渡されたのが、開催前日に出演が発表されたジャパニーズマゲニーズ。「俺は今K DUBさんからマイクをもらったことに感動してます」と孫GONGが喜びを露にし、直前のライブでK DUB SHINEがコール&レスポンスに発展させていた、2023年がヒップホップ誕生から50周年だということにも触れる。そう、日本のヒップホップ史に欠かせない場所で行われた「FUYU NO YAON」は、多様なアクトがヒップホップ愛に塗れたライフストーリーをエネルギーにしたような熱演を繰り広げることで、メモリアルイヤーを祝福し、未来に繋げるようなムードがあったのだ。


ジャパニーズマゲニーズPhoto by ハタサトシ)

オーディエンスの大半は、1996年のさんぴんCAMPも、ましてやヒップホップの黎明期も体験していない。そのオーディエンスに向けて、点ではなく線でヒップホップの歴史をひも解くようなパフォーマンスが次々と展開されていったことがとても印象的だった。ヘッドライナーのひとりであるralphが、「27年前のさんぴんCAMPの時は俺はまだ生まれていないけど、7年前のさんぴんCAMPでは俺、その辺にいたんだよ」と言って客席前方を指差し、「そこから7年でここまで来ました。俺一回も媚びてないし、他人の力も借りてないし、武器は1個しか使ってないんですよ。実力だ!」と叫んで、スキルフルなラップで場を掌握する場面があった。そして、敬愛するDJ KRUSHからのラブコールによって生まれた「Hougou feat. Ralph」の地を這うような低音のビートとラップを轟かせ、「憧れのレジェンドたちと曲ができて嬉しい限りです」と言った後、「nakamura」のリミックスでSEEDAを呼び込む一幕があった。


SEEDA、ralph(Photo by ハタサトシ)

Rolling Stone Japan 編集部

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