NY地下鉄のホームレス殺害事件、市長が「精神疾患が深刻な問題」と語る背景

ニーリーさんの死は全米で賛否両論を巻き起こしている。今回の事件の背景には、Black Lives Matter抗議活動家ギャレット・フォスターさんの殺害事件や(テキサス州のグレッグ・アボット州知事は有罪判決を受けた殺人犯の恩赦を計画している)、隣人宅の呼び鈴を鳴らして射殺されたラルフ・ヤールさん、誤って他の家の車寄せに進入したところ家主から発砲されて命を落としたケイリン・ジャイリスさんの事件がある。いずれのケースもニーリーさん同様、自己防衛や正当防衛法、憲法修正第2条をめぐる議論が白熱している。

ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は3日付の声明で、ニーリーさんを死に至らしめた要因の矛先を精神疾患に向けたようだ。「実際の状況について不明な点が多いため、これ以上の言及は控えさせていただきます」と市長。「ですが、精神疾患が深刻な問題になっていることは確かです。だからこそニューヨーク市は、ケアを必要な人々への治療提供や、街角や地下鉄の治安と危険な状況からの保護に向け、過去最多の予算を投じました」。

アダムス市長は今後も精神疾患に予算を投じていく計画を並べ立てたが、ニューヨーク市では精神患者向けサービスの予算は削られる一方だ。

連邦下院議会のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員は4日、ニーリーさんの事件は「殺人」だとツイートし、事件に対して対処を怠った当局を非難した。「いまだに当局職員からはまともな説明がありません。ジョーダン・ニーリーさん殺害の糾弾をためらうあまり、今回の暴力事件はさらにややこしくなっています」と議員は投稿した。「殺人は間違っている。貧者を殺すのは間違っている。精神的に病んだ人を殺すのは間違っている。こう発言するのがなぜそんなに難しいのでしょう?」。

ペニー容疑者は2017年にウエストアイスリップ高校を卒業し、同じ年に海兵隊に入隊。海兵隊広報担当者によると、ライフル銃兵として第22海兵隊海外派遣部隊に所属した後、2021年に除隊した。

退役軍人のペニー容疑者はいまだ訴追されていないものの、検察はペニー容疑者への起訴を検討していると伝えられている。マンハッタン地方検事局は「訴追の是非を判断するために大陪審にかけるかどうか検討している」という。

NPO団体「ブロンクス・ディフェンダーズ」で刑事裁判弁護を担当する政策ディレクターのエリ・ノースラップ氏は、今回の事件で訴追までにこれほど検討に時間がかかっているのは尋常ではないとニューヨークタイムズ紙に語っている。「まずは逮捕・起訴、その後尋問が行われるのが通常です。逮捕射が黒人や有色人種、貧困層の場合はなおさらです」

※編集部追記:現地時間5月13日にペニー容疑者は現地にて逮捕された。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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