瀬尾一三のアレンジ曲から読み解く、70年後半から80年代頭の音楽的な文明開化

My Sweet Little Eyes / しばたはつみ

田家:作詞作曲が浜口庫之助さん。

瀬尾:これは日本語の「小さな瞳」っていう曲なんですけども、これは僕がアレンジしてしばたさんが歌ってるバージョン。正規のコマーシャルで流れるやつもあるんですけど、突然非売品でソノシートで買ってくれた人の抽選で配るから、ちょっと違う風にしてくれって言われて。それでじゃあ頑張りますって言って。15秒ぐらいしかない歌を繰り返して同じ歌を作って。完全に、その頃の僕の好きだったフィラデルフィアサウンドでやっちゃおうと思ってやりましたね。なので、こんな繰り返しばっかりやってます(笑)。

田家:メンバーはどんなメンバーですか?

瀬尾:コマーシャルは一発録りなので、大きなスタジオに弦もブラスもいてっていう感じで。ミュージシャンは猪俣猛さんとか、ベースが江藤勲さんとか。

田家:かなり手だれな人たちが揃っている。

瀬尾:ジャズの人たちとかビックバンドの人たちなので、譜面を書いてそのままやってくれた。1時間で録るんですよ。せーので(笑)。

田家:76年にこういう演奏してたバンドがいたのかな?

瀬尾:いや、バンドじゃなくて、スタジオミージシャンです。みんな寄せ集めです。

田家:「My Sweet Little Eyes」っていうタイトルで『音楽と契約した男』のリストをずーっと見てったら見つけられなかったんですね。

瀬尾:ないんです(笑)。だって非売品ですもん。それを探してきて、そうだ、これ入れていいでしょうかねって。レコード会社の方が、原盤を持っているのがハマクラさんの奥さんなんですけども、それでOKでもらって入れられたんですけどね。

田家:ハマクラさんの奥さんはご本をお書きになってますからね。



田家:77年に発売になったハイ・ファイ・セット、3枚目のアルバム『ラブ・コレクション』の中に入っていました。77年の年間1位アルバムで、瀬尾さんはこのアルバムの10曲中9曲をアレンジされている。

瀬尾:「フィーリング」が売れたのでアルバムも売れたんですけど、あれだけは僕じゃなくて。ハイ・ファイ・セットの中でも僕は「中央フリーウェイ」と、これがすごく好きで。

田家:僕もこれが好きですね。

瀬尾:ユーミンの曲なんですが。

田家:でもユーミンとは違いますね。

瀬尾:これは山本潤子さんが歌うので、潤子さんのイメージというか、潤子さんが目立つようにというか際立つようにという感じでやらなきゃダメなので。あと、松任谷正隆さんと僕がやるのと根本的に違うので、それはしょうがないことです。

田家:で、ユーミンは瀬尾さんがアルファ時代に。

瀬尾:社員の頃、よく会社に遊びに来てました。

田家:高校生。

瀬尾:よく来てましたね、曲を売り込みに(笑)。

田家:その頃のユーミンさんをご存知の方が、その後のユーミンとみゆきさんの功績といいますかね、今の距離といいますか地位を作ったといいますか。

瀬尾:僕はユーミンとは仕事をしていなくて。アルファの社長の村井邦彦さんからユーミンは松任谷でやってくれって言われて、僕は社員としてはアレンジャーとしてやってたわけではなかったから。会社員の時も隠れて副業でやってましたけど(笑)。正式に動き始めたのは会社をやめてからなので、その何年後になりますけども、まさか中島さんと仕事するなんていうのは夢にも思ってない頃ですね。この頃は、もしかしたらユーミン派だったかもしれない(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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