瀬尾一三のアレンジ曲から読み解く、70年後半から80年代頭の音楽的な文明開化

酒もってこい / 芝田洋一

田家:1980年1月発売、芝田洋一さん「酒もってこい」。三味線が流れておりますが。

瀬尾:津軽三味線。若い弾き手の方が2人いて、芝田洋一さんが連れてきて、この曲のために弾いてた人たちなんです。デモテープ的なものを聞いた時に、これはファンクだなと思って(笑)。これはジャパニズファンクにしちゃおうみたいな感じで。

田家:黒っぽい日本の歌というか。歌って踊ってと。山形出身のシンガーソングライターで、79年のポプコンで優秀曲賞を受賞している。

瀬尾:風の噂で聞くと、お亡くなりなったヤマハの音楽選考会の主催者である川上源一さんに「あれはないね」って言われた(笑)。

田家:あははは。瀬尾さんのご実家に浄瑠璃とか長唄とか、浪曲のSPレコードもいっぱいある?

瀬尾:はい、父方の祖父の趣味で、自分でも浪曲を歌ったり浄瑠璃を語ったりしてたので。だから、あまりこういうものに対しての疎外感というか違和感はないんですけど。

田家:なるほどね。今回のアルバム、最初に音源をいただいた時に資料がなくて、タイトルだけバーって書いてあったんです。えっどうしようと思いました。曲を聞いたことがないし、アーティスト名も知らないし。で資料をいただいて、なるほどなと思って。

瀬尾:でも僕、めっちゃくちゃこの時は気に入ってたんですけどね。やった!津軽三味線ファンクだぜ!ってやってたのに、周りからは鶴の一声で、あれはないんじゃないって言われてしまった(笑)。

LIVING IN THE CITY / Judy Anton

田家:「LIVING IN THE CITY」。作詞・松本隆、作曲・瀬尾一三。

瀬尾:これは松下誠さんが編曲してくれたので、とてもおしゃれになってます。

田家:Judy Antonという人は、NY出身のシンガーソングライターで、11PMのカバーガールをやってたんですよね。

瀬尾:モデルとかそういうので有名だった人だと思う。綺麗な方だった。実はこれ、コマーシャルだったはず。伊勢丹のコマーシャルで作ったはずです。

田家:アルバムが80年の『Smile』で、カシオペアのメンバーとかが参加している。

瀬尾:やっぱり松下誠さんの流れですね。僕の流れではカシオペアなんか呼べません(笑)。

田家:松本隆さんと詞と曲のコンビってあまり多くない?

瀬尾:いや、岡田奈々さんとか結構組んでましたよ。あと知られてないんですけど、彼が詞を書いて僕は曲っていうコマーシャル結構あるんですよ。

田家:でも思いかけない組み合わせで埋もれている曲はいっぱいあるでしょうね。

瀬尾:本当に鬼のように仕事してましたからね。彼もすごい量産をして。J-POPからアイドルさんまですごく幅広くて書いてて、CMも書いてとかってやってたんで。

田家:それは掘りがいがあるということで、『SUPER digest~』5が出るというところに今話がつながりましたね。

瀬尾:あはははは(笑)。

田家:アルバムの振り幅をお楽しみいただこうと思います。7曲目です。CHAGE and ASKA「男と女」。

Rolling Stone Japan 編集部

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