連続殺人事件をコンテンツ化する人々、絶滅したはずの陰謀論がTikTokで再燃 米

ワクスも金儲け疑惑が原因で、TikTokの英雄からまゆつば者に転じた。ワクスは捜査を呼びかける2本の動画で、自分がチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)を務めるスタートアップ企業Foresyteのカレンダーアプリを口にしている。Foresyte社のステファン・エディCEOはLinkedInの投稿で(現在は削除されている)、ワクスの拡散動画をリンクしたおかげでアプリのダウンロード件数が上がったと喜んでいた。だがその後、ワクスが捜査と拡散動画を利用してアプリをバズらせている、という非難が数百件ちかく寄せられた。「彼は他人の不幸を金儲けの道具にしている」とは、メレディス・リンチというユーザーのコメントだ。「この手のコンテンツは危険だ」と、クリエイターのジャスティン・バーネットも賛同した。

Foresyte社はローリングストーン誌の最初のコメント要請に対し、ワクスは「うっかり」アプリを口にしたのであって、マーケティング戦略の一環ではないと回答した。その後も批判が相次ぐと、Foresyte社はワクスと「袂を分かった」ことを公表した。「ケンはCMOとして、我々のチームに労力と情熱を注ぎ込んでくれましたが、私生活で発覚した別件により……両当事者は別々の道を歩まなくてはならなくなりました」と、Foresyte社の広報担当者は述べている。あらためてワクスにコメントを求めたが、ノーコメントだった。だがTikTokに投稿された動画には、「僕らは別々の道を進みますが、ご健勝を祈ります」と会社にメッセージを送った。

ワクスはTikTokに投稿した2本の謝罪動画のひとつで、捜査の流れでアプリを口にしたのは「不注意だった」が、純粋な過ちだったと述べた。「正直、事件に少しのめり込んで調子に乗ってしまった」と本人。捜査は今後も継続するが、TikTokで進捗状況を公開するのは辞めると宣言した。

ワクスはローリングストーン氏の取材申請を辞退したが、「自分が連絡を取っている刑事や、必要な時間を割いて真相究明にあたるしかるべき当局」に捜査結果を提供する計画だとメール経由で語った。また、動画によって志を同じくする人々との間に連帯感が生まれたとも語った。「僕と似たような経験をした人――深夜に車が近づいてきて、怪しいやり取りをした人――や、行方不明者に心を寄せる人々が他にも大勢いる」とワクス。「事件に関する情報を提供してくれた人も何人かいて、真の仲間意識が生まれた」。

だがゴラブ教授は、実録犯罪がますますコンテンツの主流になって人々を楽しませる一方、しばしば被害者や被害者の思い出が犠牲にされていると付け加えた。

「大衆文化では連続殺人犯が定番化しています。そういう意味で、人々は事件解決を何度も目にしているため、解決方法を知っている気になってしまう。ですがTikTokの世界では倫理が通用しません。こうしたことに対する規制も罰則も一切ないようです」とゴラブ教授は言う。「実録犯罪ものは被害者を無視して、加害者を話題にします。こういうおかしな風潮で、話題の中心は被害者ではなく、話題を作ろうとするクリエイターに向けられてしまっています」。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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