Novel Coreが語る、 ラップの表現とロックバンドの融合、過去から未来へ

なぜロックを選んだのか?

―第一線で活躍するロックバンドから刺激を受けた上で、とはいえ「なぜロックシーンなのか」をもう一歩踏み込んで聞いてみたいなと思うのですが。1stシングルの表題曲「BYE BYE」でロック、ポップパンクをやりたいと思ったのはどういう気持ちがあったからだと言えますか。

Novel Core:これに関しては、思い返せば思い返すほど……僕、インディーズのデビューシングルが「Metafiction」じゃないですか。あれもゴリゴリのロックチューンだったし。Zeebraさんからデビュー曲の候補として、いろんなトラックメーカーさんから合計300トラックくらいもらって、全部聴いた上で「これ」って選んだのがあれだったんですよ。だから多分、根っこではずっとそれが好きで。学生時代にバンドを組みたかった欲とかも絶対どこかにあって、引っかかっていたのはあるんですよね。ただそれはマイナスな意味でなく、今の自分のスタイルで楽しくやってきて、これが俺だと思ってたし、それだけでも十分楽しかったんですけど……ロックフェスでラップをしたときの強さをすごく感じたんですよ。ヒップホップのルートを通ってきている僕たちのラップのスタイルって、たとえばロックバンドのボーカリストのラップのスタイルとは異なるじゃないですか。



―うん、そうですね。

Novel Core:会場でやったときに、それまでは反応が強くなかったお客さんたちの急な振り向き方を感じて、これはもしかすると自分はラップという要素を持ってるからこそ、そっち方面に出ていった方がいいのかもしれないと思って。お客さんがめっちゃ湧くんですよね。だからヒップホップというジャンルやシーンに固執するんじゃなくて、逆に違うところに出ていった方が、むしろ自分らしい戦い方ができるんじゃないかなっていうのをライブに出演するたびに感じてました。お客さんの声出しが可能になったフェスで日高さんのライブを客席側から見る機会も増えたんですけど、ラップに入った瞬間のみんなの食いつき方が尋常じゃないんですよね。それは要素として自分にも絶対あるので、伸ばしたいなというのをすごく感じました。

―それは日高さんやCoreさんのラップスキルの高さと、自分自身をプレゼンする力が圧倒的であるということに加えて、時代的にもジャンルのクロスオーバーが当たり前になっていて、ロックフェスにいるリスナーにとってラップが「ちょっとよくわからないもの」ではなく親しみやすいものになっているという側面もあるのかもしれないですよね。

Novel Core:そんな気もしますね。たとえば(sic)boyくんとか、ロックの血をDNAに流しているアーティストが『POP YOURS』みたいなヒップホップフェスに出たときもお客さんがついてくるじゃないですか。ということは、逆もできると思ってて。それをやってみたくなったのもあります。

―(sic)boyさんは、仲良いですか?

Novel Core:仲良しです、「Sid the Lynch」名義だった頃から。渋谷のCLUB MALCOMとかで同じイベントに出たりして。LEX、Sid the Lynch、YOSHIKI EZAKI、TRASH ODE、俺とかがそのイベントにいたりしてました。(sic)くんは当時から超かっこよかったので、ずっと好きでしたね。

―今も(sic)boyさんとはやりたいことやマインドが共鳴していると思いますか。

Novel Core:そうですね。YUNGBLUDが日本に来たときにパーティーで(sic)くんも一緒で。YUNGBLUDと(sic)くんと俺の3人でいる時間もちょっとあって、「全員絶対似てるわ」みたいな(笑)。

―その3人のトーク、今の音楽シーンの変化を記録する上で絶対に重要だから記事にさせてほしい(笑)。

Novel Core:はははは(笑)。でもやっぱり似たマインドは感じますね。

―昨年もいろんなフェスに出ていたし、ロックフェスで鳴らすために作った「独創ファンタジスタ」の反応も悪くはなかったと思うんですけど、こうやって「Novel Core & THE WILL RABBITS」として活動することを選んだのは、それでもロックシーンに出ていくにはまだ足りないものがあるという実感を持って帰ってきていたということですよね。

Novel Core:そうですね。やっぱりバンドとしての呼吸みたいなのがもっと必要だなって感じたし、メンバーもそれを感じていて。だから日常的にもっとコミュニケーション取ろうとか、ライブ後にフィードバックし合う回数を増やそうとか、そういうことを「THE WILL RABBITS」という名前を手渡してからは考えていました。みんなで根本的な意識を高く持つことが必要なんだろうなとは、他のバンドの人たちを見ていて思ったので。

―ロックシーンに出ていきたい、ロックフェスでみんなを振り向かせたいと思ったときに、演奏が上手くて整った音を出せていたらいい、みたいなものでは実はなくて。

Novel Core:そうなんですよね。リハでやっていたことを完璧に出したらお客さんがぶち上がるかといったら、そうでもないし。その日の会場の空気感に即座にレスポンスして、お客さんと会話しなきゃいけないじゃないですか。フロントマンの僕はマイクを握っているのでわかりやすいですけど、ドラムもギターもキーボードもDJも、それぞれがお客さんと会話できる余裕を持たなきゃいけないし、横で(=メンバー同士で)もっと会話をしながらライブをしなきゃいけないし。それはやっぱり課題として強く感じていました。

―バンドって人と人のエネルギーが掛け合わせることで生まれる何かを表現する集団でもあって、オーディエンスもそれを求めているから、演奏スキル以外の面も大事になってくると思うんですけど、5人はマインドやバックグラウンドでも共鳴するところがありますよね。

Novel Core:そうですね。とにかく音楽に対して真摯であること。あと未来に対して熱い。Novel Coreチーム自体がワクワクを資本に生きていくことをテーマにしている分、バンドメンバーも未来に対して熱さを持つことは大事だと思っていたんですけど、入ってくる段階からみんなそれぞれ未来に対して熱いし希望を持ってるし。……あとは、素通りされた数も似てるんだと思う。

―そう、それですよね。

Novel Core:それ、結構大きいと思ってるんですよね。僕とクマさんと響さんは路上やってたし。KOTAくんは僕が始めたての頃にバックDJに入ってもらって、レギュラーで回してたクラブのDJとかもやりながら、当時まだシーン自体が僕みたいなタイプに対する理解もそんなにない中で、多分「Novel Coreなんかやってんの?」とか言われながらもやってくれて。肩身狭い思いをする瞬間もあったと思うんですよ。うっちーくん(Yuki Uchimura/Key)は俺らがバンドに誘う直前までは、しんどくなっちゃって音楽自体から離れていて。たまたま復帰して1発目に行ったセッションでクマさんと出会って、うちのバンドに入ってくれたんですよね。めちゃくちゃでかい会場でライブをやっても小さい会場でライブやっても、毎回僕含めみんな感動があるのは、もうまるでそこにいない者みたいに素通りされてきた期間があるからだと思う。1人でも自分の音楽を求めている人がいるのを見たときの感動は、ずっと今後も大事にしていきたいです。自分をメンバーそれぞれに投影することで、自分自身の過去が報われていく感覚みたいものもすごくありますね。みんながそれぞれ持ってるトラウマとかネガティブな要素を、このバンドでいろんな景色見ていくたびに、1個ずつ上書きできたら最高だなと思う。


Photo by Kentaro Kambe

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