ブラーのデーモン・アルバーンが語る復帰作に込めた思い、サマソニと日本での記憶

「政治的であること」について

―「Russian Strings」は、昨2022年に始まったロシアによるウクライナへの攻撃を念頭に入れたような歌詞にも思えます。

デーモン:これは、僕がプーチンに連絡を取ろうとしているところから始まるんだ。「あなた達の文化はどうなってしまったんだ? あなた達の『ペトリューシュカ』はどこに行ったんだ? ロシアが世界に提供できる、バラライカやバレエや文学といった美しいものはどこへ行ってしまったんだ? なぜあなたはそんなに被害妄想になって全てに対して怒っているんだ?」って具合にね。

―なるほど、冒頭の’Where are you’の‘you’とはプーチンのことだったんですね。

デーモン:そうだよ! でもそれから、ヘッドホンをつけて周りの狂気を全て遮断して音楽に没頭して、世界で起こっていることを気に留めていない人へと変わるんだけど、僕たちはみんなこれとつながっているんだ。そこ日本でも、ここロンドンでも、みんなつながっているんだよ。僕たち全員、何らかの形でコントロールされているんだ。人形師に操られている操り人形なんだよ。僕は音楽家/アーティストとしてこうした状況をそのように捉えている。よくあることじゃないか。個人的体験から新しい形態を生み出そうとして、それと他の形態をカップリングさせて新しい形態を生み出すってことが。


Photo by Xavi Torrent/Redferns

―それはあなたにとって、ブラーにとって反戦の重要な行動の形だと思います。日本を代表する音楽家で、2月に亡くなった坂本龍一は、自身、癌と闘病しながら、ウクライナのバイオリニストとリモートで音源のやりとりを重ねて曲を制作したりもしていました。彼は亡くなる直前までに日本で自然破壊、環境問題について強く警戒の意思を伝えていて。今、ふとその坂本のことを思い出しました。

デーモン:ああ、それは彼の音楽を聞けばわかるよ。常にそういった緊張感の中でやっていたよね。

―あなたも常にそうした社会的な活動に意識的ですよね?

デーモン:もちろん。僕は常に、政治的であると同時にエモーショナルな音楽を作ることを心がけてきた。この2つは一緒でないといけない。エモーション過多で政治がなくなると、(政治に)関わることの重要性を無視することになるし、政治過多でエモーションがなくなると、なおさら危険だ。孤立(isolation)とパラノイアを引き起こすからだ。

―今のイギリス国内に暮らす中で、あなた自身が危惧しているこうした問題点……とても多いかとは思いますが、ネームバリューのあるあなただからこそ訴えかけることができることがあるとすれば、それは何でしょうか?

デーモン:ある程度できることはあるだろうけど、肝心なのは自分の人生で起きるそれぞれの機会や出来事にどう関わるかだよね。それがこの世における自分の時間の使い方だ。自分の進むべき道は他の誰にも決められない。決められると思いたいけど、決められないよね。そういった意味では、ただひたすらうまく行くことを願うだけだ。Send out good vibrations……だね。それ以外、アーティストとして他にできることはないと思うな。

Translated by Mariko Kawahara

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