ブラーのデーモン・アルバーンが語る復帰作に込めた思い、サマソニと日本での記憶

アートワークの真意、サマーソニックと日本での記憶

―アルバムのアートワークも象徴的です。マーティン・パーによる『Life’s a Beach』の1カットですが、プールの色鮮やかなブルーと、空のネズミ色の対比、そして最も手前にポツンと置かれた監視台がどことなく不気味な空気を醸し出しています。何かを示唆しているようで、何かに警鐘を鳴らしているようで、何かからの啓示を受けているようで……この写真をカバーにした一番の理由、その意図と、アルバムが出来上がった今、この写真との整合についてあなたの意見を聞かせてください。

デーモン:あれはとても緊迫した写真だ。ほとんど三連作(triptych)のようで、色鮮やかなブルーの空間のユートピアがあるけど、そのユートピアには何かが欠けている。それから自然界の海があって、制御不能でパワフルだ。それから暗い山と空があって、ユートピアが鏡に映ったような姿、すなわちディストピアだ。



―なるほど。でも先ほど、今作にはアップリフティングな要素もあるとおっしゃいましたよね。

デーモン:そうだよ。でもそれはどこにある? 闇の中か、それとも光の中か? 僕にはわからない。即答が難しい質問だ。自分で見つけるしかないね。

―光が存在するためには、闇が必要ですからね。

デーモン:もちろんだとも。

―だから両方の存在を明示する必要がある。

デーモン:あと、闇の中に自分を見つけたら、自分を見てみるといい。もしかしたら、自分が光かもしれないからね。



―さて、8月には久しぶりにサマーソニックで来日します。

デーモン:そうなんだ、すごく楽しみにしているよ! 娘と一緒に前倒しで行くんだ。ちょっとした旅行を楽しもうと思っている。娘がかなり小さかった頃にも日本に連れてきたことがあるんだ。その時は僕の両親と娘の母親も一緒でね、日本中を廻ってとても楽しかった。2歳の子供と一緒に行ける範囲でかなりいろいろなところに行ったよ。いや、2歳にもなっていなかったか。1歳だったかもしれないな。それ以来、娘は日本が大好きになったんだ。僕は娘と一緒に韓国にも北朝鮮にも行ったんで、娘は極東をかなり観たんだ。娘は中国にも行った。それが娘の人格形成にかなりの影響を及ぼしたんだ。僕にもそういうことがあったし、このことはバンドのメンバーとも話をしたけど、僕たちはみんな初めて行った日本から多大な影響を受けたんだよ。20歳ぐらいだった当時の僕たちにとって、最大のカルチャーショックだったんだ。というわけで、また日本に行けることが光栄であるだけでなく、とてもエキサイティングだ。日本にいる間にやりたいことが山ほどあるんだから。みんなも、僕たちと同じくらいエキサイトして欲しいよ!

―前回のサマーソニック出演時(2003年)の思い出などがあれば聞かせてください。

デーモン:ひどい時差ボケに悩まされていたんじゃないかな。僕は、曲の途中で立ったまま寝ていたかもしれない(笑)。ステージでそれをやるのはなかなか難しいよ。でも、次回はそうならないことを約束する。ライブの5~6日前に日本に行くから、時差ボケは治っているだろうね。

―これまでのいくつもの日本公演であなたが特に印象に残っているのはどのステージですか?

デーモン:随分たくさんのギグをやってきたからなあ。最初の頃のギグは、僕たちにとって途方もないことだった。東京でギグをやって、東京の街を満喫したんだから、素晴らしかった。僕がやったコンサートの中で最も奇妙かつモダンだったのは、東京の科学博物館(日本科学未来館)でAIロボットに向けてプレイした時だ。彼らのためにちょっとしたコンサートを開いて歌ったんだよ。あれは変わっていたな。10年はゆうに経っていると思う。もっと前だったかもしれない(編注:2014年開催なので8年前)。今のAIロボットのオーディエンスは、反応のニュアンスがもっといいだろうね(笑)。

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2014年、日本科学未来館でのライブ映像




ブラー
『The Ballad of Darren』
2023年7月21日(金)リリース
国内盤CDボーナス・トラック収録
再生・購入:https://blur.lnk.to/TBOD

限定グッズ購入:https://store.wmg.jp/collections/blur/


SUMMER SONIC 2023
2023年8月19日(土)〜20日(日)
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ/大阪:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※全券種ソールドアウト、ブラーは19日・東京/20日・大阪に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/

Translated by Mariko Kawahara

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