ジョージ・ハリスンを称える『コンサート・フォー・ジョージ』が不朽の名作になった理由

 
今は亡きロックスターたちの名演

ホスト役を務めるエリック・クラプトンが主役の曲以外にも、いずれ劣らぬ名演が盛り沢山。悲しいことだが、今は亡くなってしまったロックスターたちによる渾身の名演をとらえた映像作品という意味でも、本作の資料価値は高い。

まず、ジョージ、ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、ジェフ・リンといった先輩たちと共にトラヴェリング・ウィルベリーズを結成して活動したトム・ペティは、ザ・ハートブレイカーズを従えて2曲で登場。ビートルズの『リボルバー』に収められた「タックスマン」でトムと息の合ったハーモニーを聞かせるギタリストが印象的だが、70〜80年代のハートブレイカーズしか知らない人が見たら「誰?」と思うかもしれない。彼はイギー・ポップ&ストゥージズやモーテルズを経てジャクソン・ブラウンなどのバックで活動していたスコット・サーストン。ハートブレイカーズのツアーにサポートメンバーとして帯同後、1999年から正式メンバーに昇格した、隠れた逸材だ。



そしてトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズにジェフ・リンとダニー・ハリソンが加わった「ハンドル・ウィズ・ケア」では、元メンバーは2名のみだがトラヴェリング・ウィルベリーズが復活! ジョージのパートをトム、ロイのパートをジェフが歌って埋めるが、それぞれ故人の特徴をとらえた丁寧な歌唱が胸に迫る。ここでは元気に歌っていたトムも、2017年に鎮痛剤の過剰摂取が原因で帰らぬ人となってしまった(享年66)。

故人の勇姿として忘れられないのが、「イズント・イット・ア・ピティ」(エリック・クラプトンとデュエット)と「マイ・スウィート・ロード」で力強いボーカルを見せつけるビリー・プレストン。ゲスト参加した『ゲット・バック』セッションで“5人目のビートルズ”としてマジックを起こし、1971年のチャリティ・イベント『バングラデシュ・コンサート』でも見せ場を作ったスベり知らずの男だ。演奏中は何も問題がなさそうに見えるビリーだが、この2002年に腎臓移植手術を受けた。しかし体調が思うように改善せず、心膜炎を患った後の2006年に他界した(享年59)。



劇場公開版ではリード・ボーカルを務めた「オールド・ブラウン・シュー」がエンディングのクレジットで音声が流れるのみにとどまったが、サイドで活躍するプロコル・ハルムのシンガー兼キーボード奏者、ゲイリー・ブルッカーにもご注目を。彼はプロコル・ハルムの前身となったR&Bバンド、パラマウンツ時代にビートルズのUKツアーをサポートしたのが縁でジョージと接近。ツアー中は共に“一服”するほど打ち解けた仲になったそう。そして『オール・シングス・マスト・パス』のセッションに参加したのを皮切りに、ジョージのソロ作に何度も客演する常連ミュージシャンのひとりとなった。90年代にはリンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンドでもプレイ。晩年まで精力的に音楽活動を続けていたが、昨年がんのため亡くなった(享年76)。

娘のアヌーシュカ・シャンカールが指揮をした「アルパン」やジェフ・リンと共演した「ジ・インナー・ライト」では演奏こそしていないが、ラヴィ・シャンカールも登場。ジョージをインド音楽の深部へと導いた偉大なシタール奏者は、アヌーシュカやノラ・ジョーンズの実父。ジョージより20歳以上も年上だった“師”は長寿に恵まれ、2012年に92歳で亡くなった。

 
 
 
 

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