ゴーゴー・ペンギンが語る「変化」と「進化」の過程、坂本龍一やデフトーンズから受け取った刺激

ゴーゴー・ペンギン、フジロック'23にて(Photo by Yuki Kuroyanagi)

ドラマーのロブ・ターナーが脱退、新たにジョン・スコットを迎え、5年間在籍したブルーノートを離れて再スタートを切ったマンチェスター出身のトリオ、ゴーゴー・ペンギン。7月29日(土)、フジロックのFIELD OF HEAVENに登場した3人は、最新作『Everything Is Going To Be OK』から6曲と、それに先駆けてリリースされたEP『Between Two Waves』から1曲、そして過去のレパートリーから「Bardo」や「Protest」など5曲をプレイ。ピアニストのクリス・アイリングワース、ベーシストのニック・ブラッカが共にシンセサイザーを併用、アレンジがより多彩になり、新章に突入したバンドの現在を伸び伸びと見せつけた。来年1月に単独公演で再び来日する3人に、変化の過程と、絶好調の現在についてたっぷり語ってもらった。

【写真ギャラリー】ゴーゴー・ペンギン フジロック撮り下ろし(全10点)


左からジョン・スコット(Dr)、ニック・ブラッカ(Ba)、クリス・アイリングワース(P) Photo by Emily Dennison


新ドラマーのジョン・スコットについて

─最新作『Everything Is Going To Be OK』は、インストゥルメンタルなのに歌詞が聞こえてくるような気分にさせられる、感情に訴えかけるアルバム、と感じました。

ニック:そんな風に言ってもらえるとうれしいよ。

─このバンドは誰かひとりだけが突出しない、3人が等しく影響し合うバランスが重要だと思うので、新しいドラマーを選ぶのは簡単ではなかったと思います。どんな流れでジョンが加入することになったのか教えて頂けますか?

ニック:実はそれほど難しくなかったよ。

クリス:ニックはジョンのことを何年も前から知っていた。僕はジョンと会ったことがなかったけど、フェスで近くに座ったことはあったんだよね(笑)。そのときはお互いを知らなかったけれど。新しいドラマーを探し始めたとき、ニックが僕にジョンを勧めてくれて、彼が他のミュージシャンと一緒に演奏しているビデオをいくつか見た。それが素晴らしかったので、ジョンをマンチェスターに招いて、一緒に何曲か演奏してみたんだ。そのセッションが実にいい感じで、最高のドラマーを見つけたと思ったよ。

ジョン:ごく自然な流れだった。初めて一緒に演奏してから、ピザを食べながらビールを飲んだよね(笑)。

クリス:ニックがバンドに加入した頃みたいだな、と思った。本当の意味でゴーゴー・ペンギンが始まったのはニックが加入してからだと思っているんだ。『V2.0』(2014年のアルバム)のリハーサルを始めた頃、僕とニックはお互いの顔を見てニヤニヤし合っていたのを覚えている。ジョンとも、まさにそんな感じだった。僕らは一緒にプレイをするのがまだこんなに楽しくて、これほどエネルギーがあるんだ、と実感できたし、素晴らしいことだと思ったね。




フジロック'23にて(Photo by Yuki Kuroyanagi)

─ジョンはカイロス・4テットでプレイしていたし、シャバカ・ハッチングスとも共演しましたよね。最近はマルチトラクション・オーケストラのアルバムにも参加していますが、一方でヘンリー・ロウサーのような大ベテランとも交流を持っていて、非常に活動の幅が広いです。そんなあなたが、ドラマーとして自分の個性が固まってきたと実感するようになったのはいつ頃からでしたか?

ジョン:僕も彼らと同じようにマンチェスターに住んでいたけれど、ロンドンに出てからもう15年になる。音楽大学に行った後、そのムードから抜け出して自分自身を見つけるまで、誰でも数年はかかると思う。僕の場合、学校で勉強し始める前にとても興味深い音楽的な経験をたくさん重ねていたから、後で自分のアイデンティティを“再発見”することができた。エレクトロニック・ミュージックとジャズを数年間やって、一度そこから抜け出して、その後に2つを統合した感じかな。君はバイロン・ウォーレンを知っているよね? レッド・スナッパーのメンバーだった人だ。

─はい、素晴らしいトランペット奏者ですね。

ジョン:僕はムラトゥ・アスタトゥケのバンドでバイロンと一緒だった。彼は僕にとって非常に重要な存在だったよ。幅広い音楽とのつながりを再び得るという意味でね。彼らとの関わりは本当に重要な体験で、音楽を深く探求するいい機会になった。


ムラトゥ・アスタトゥケのライブ映像(2023年)、ジョン・スコットとバイロン・ウォーレンが参加

─あなたはグレイト・ディヴァイドの「Ibrahim」というシングルでロバート・ワイアットとも共演していましたね。

ジョン:そうなんだけど、ロバート・ワイアットとは残念ながら会えていない(笑)。できることなら会いたかったけれど、あれはオーヴァーダブなんだ。ロバートにはもちろん影響を受けていて、彼の『Shleep』というアルバムが好きだよ。


Translated by Kyoko Maruyama

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