続・J-POPの歴史「バンドからソロへ、音楽業界が盛り上がり続けていった1996年と97年」

音楽業界が盛り上がり日本では1998年にCDが約5879億円の売り上げを記録(pixabay)

音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。

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2023年7月の特集は「田家秀樹的 続90年代ノート」。「J-POP LEGEND FORUM」時代に放送した「60年代ノート」「70年代ノート」「80年代ノート」の続編として、今年5月に特集した「田家秀樹的90年代ノート」の続編で、よりパーソナルな内容の90年代特集。PART4は、1996年、1997年のヒット曲10曲をピックアップする。



こんばんは。「J-POP LEGEND CAFE」マスターの田家秀樹です。今流れているのは、奥田民生「イージュー☆ライダー」。96年6月に発売になった6枚目のシングル。「イージュー」というのは、業界用語で30のことですね。民生さんは1965年5月生まれ。この曲を制作していたのがちょうど30歳。あの70年に公開された映画『イージー・ライダー』と掛詞になってますね。30歳でも自由だよ。大げさに言うとそういうことだっていうのが民生さんらしいですね。今日の前テーマはこの曲です。

今週は96年と97年。90年代の折り返しが過ぎて、後半に差し掛かりました。ユニコーンは87年にデビューして、93年4月に解散したんですね。それぞれがソロになって、民夫さんは92年に『休日』でソロデビューしました。94年の2枚目のシングル『愛のために』がミリオンセラー。95年にソロデビューアルバム『29』を発売しました。29歳という年齢ですね。バンドからソロ。いろんな人たちがそういう軌跡をたどってますが、民夫さんもはっきりと軌跡を残してますね。3枚目のシングルのタイトルが『息子』。父親と息子。4枚目のシングル『コーヒー』。日常的なことですね。その中にも「もう30だから」っていう歌詞がありました。5枚目が『悩んで学んで』。その後がこの「イージュー★ライダー」。やっぱり俺たち自由だよなって、そんな歌でしょうね。民生さんは70年代ロック少年なんで、30代は信じるなって言葉を知っている世代ですね。バンドを解散してソロになって30代を迎える心境がつづられてます。この年、民生さんにはもう一つ大きな出来事がありました。その話は後ほどです。

バンドを休止してソロになった人の名曲をもう1曲お聴きいただきます。96年7月発売、玉置浩二さん「田園」。



96年7月発売、玉置浩二さんの「田園」。11枚目のシングルですね。作曲が玉置さんで、作詞が玉置さんと共同プロデュースの須藤晃さん。尾崎豊さんのプロデューサー。玉置さんは87年にソロデビューしてたんですが、安全地帯が活動を休止して本格的にソロに専念するようになりました。93年の彼のアルバム『あこがれ』で作詞を担当したのが須藤さんですね。『カリント工場の煙突の上に』。あのアルバムのタイトルもそうなんですけど、安全地帯のときにはなかった生活感というのが色濃くなりました。「田園」はそういう名曲の一つですね。これは年間チャート25位、玉置さんソロの最大のヒットです。民生さんにしても玉置さんにしても、バンドからソロになって新しい扉を開けました。

Rolling Stone Japan 編集部

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