サマーソニック総括 灼熱のステージで名演続々、史上最速ソールドアウトがもたらした熱狂

東京2日目・8月20日(日)


ケンドリック・ラマー(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.


ケンドリック・ラマー(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

【Kendrick Lamar】

東京2日目のMARINE STAGEのヘッドライナーは、2018年フジロック以来の来日となるケンドリック・ラマー。パープルのセットアップ、スカーフかタオルを頭にかぶりその上にキャップというファッション。ステージ袖に構えたバンドによるパワフルでタイトな演奏によって、ケンドリックのラップの切れ味も増大。コンテンポラリーダンスのような動きをするダンサーたちの演出も相まって、寸分違わぬ完璧なパフォーマンスアートのようでありながら、この瞬間だけの爆発力をも滲ませる圧巻のステージだった。そして、5年前のフジロックでの終始居合をやっているような緊迫感溢れた雰囲気と比べ、オーディエンスが入り込める懐の深さを感じた。冒頭の「N95」のパフォーマンス時、ステージから炎が勢いよく上がった後、開いた両手を頭の位置まで上げて、指をくいくいっと動かしたケンドリックのジェスチャーは「来いよ、楽しもう」という意志の表れにも見えた。

「今夜の気分はどう?」と言ってからの「A.D.H.D」で「fack that」コールを巻き起こしつつ、続く「King Kunta」では大合唱が起こる。ケンドリックもステージ中央から下手、上手に移動しながら、大合唱と一体化する。声出し制限が解けたからなのか、今回のサマソニの客層ゆえなのか、日本のラップシーンの土壌が変わったのか、とにかく頻繁に大合唱が巻き起こった。もちろん「DNA.」や「HUMBLE.」といった楽曲でもひときわ声が響く。ケンドリックも熱っぽく「カモン!」と呼びかけ、ライブの後半になればなるほど、オーディエンスとの距離感は密になっていった。

「Die Hard」でAmanda Reiferの麗しい歌声が響いた後、「LOVE.」で大量のスマホライトが揺れ、至福のメロディの大合唱。「Alright」ではオーディエンスのジャンプでマリンスタジアムが揺れた。しばしの沈黙が流れる中、仁王立ちするケンドリックからはまさに王者の風格が漂う。大きな歓声と拍手が送られ、ラストは「Savior」だった。


WILLOW(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.


WILLOW(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

【WILLOW】

「1、2,3,4」という勢いあるカウントアップから、勢いよく登場したWILLOW(ウィロー)。ビジョンに「今日はみんなに会えて本当に嬉しい 一瞬に楽しもう」という日本語のメッセージが掲示される前で、フライングVを掲げ、思いっきり「トーキョー!!」と叫ぶ姿に一気に引き込まれたオーディエンスは少なくないだろう。

「Falling Endlessly」、「curious/furious」、「WHY?」とヘビーでハードな音像を叩きつけていく。「ここにいるすべての美しい女性たちにこの曲を捧げます」という日本語のメッセージを映し、自らも英語でメッセージを送った後、「hover like a GODDESS」で引き裂かれた心を叫んだ。

実兄ジェイデン・スミスの楽曲である「Summertime in Paris ft.WILLOW」ではジェイデン本人が登場。美しい二人の姿が収められたMVがビジョンに映る前で、スモーキーなジェイデンの声とハスキーなWILLOWの声が重なり、ビターでスウィートなグルーヴを創出する。最愛の妹とハグして、何度も「ウィロー!」と叫ぶジェイデン。この二人のステージを見るのは個人的には3度目だが、いつ見てもお互いへの愛とリスペクトに溢れていて素敵だ。

「楽しかったよ これからはもっと日本に来てライブしたいな」というメッセージが映り、美しいメロディを宿した「Wait a Minute!」がラスト。残り時間を惜しむかのように、ステージ上をアグレッシブに動きまわり、フライングVをかき鳴らすWILLOWの姿はとても眩しかった。


メイジー・ピーターズ(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.


メイジー・ピーターズ(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

【Maisie Peters】

エド・シーランが主宰する「Gingerbread Man Records」に所属する23歳のシンガーソングライター、メイジー・ピーターズ。自身にとって初のアジア圏のフェス出演となった。恋愛の痛みや苦しみをポジティブに転嫁させたポップソングを次々と披露していく。深い傷をキャッチーなリリックとメロディに昇華して、痛快なポップソングに仕立ててしまう手腕はやはり見事。ひときわ盛り上がったのが代表曲「Psycho」だ。元彼に対して「私はとっくに乗り越えてるのに、何度も電話してくるなんてサイコだ」と言い放つ楽曲だが、ハンドマイク姿で颯爽とステージの端から端まで動きオーディエンスに近づきながら、キュートな魅力を放つ姿は、今年3月の初来日公演と比べ、ポップスターとしての輝きがさらに増していた。

【写真ギャラリー】サマーソニック ライブ写真まとめ(記事未掲載カット多数)

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