サマーソニック総括 灼熱のステージで名演続々、史上最速ソールドアウトがもたらした熱狂

【FLO】

三位一体のフォーメーションを組み、これぞR&B!な伸びやかでパワフルな歌声を聞かせたイギリスの3人組、FLO。ミッシー・エリオットやSZAに賞賛され、2023年のブリット・アワードでライジング・スター賞を受賞した新鋭ではあるが、既に貫禄を感じる。一方MCでは、新しいEPがリリースされたことを嬉しそうに告げたり、初々しさを感じさせた。奥行きがある完璧なコーラスワークを聞かせつつ、3人それぞれの歌唱力も際立たせ、クラシカルなR&Bにモダンさを加えた力強い音像を紡いでいく。FLOにデスティニーズ・チャイルドを重ねる人も少なくないと思うが、終盤には「Independent Woman Part 1」のカバーを臆面もなく入れ込んだ。その素直さがまた今っぽい。


ザ・キッド・ラロイ(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.


ザ・キッド・ラロイ(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

【THE KID LAROI】

ほんの3日前に20歳になったばかりのザ・キッド・ラロイ。何のセットもないステージに、Tシャツにハーフパンツという普段着スタイルで登場。ステージ前方ギリギリまで出てきてしゃがみながらオーディエンスに話しかけたり、ステージから降りてセキュリティに支えられながら柵に上って歌ったりと、できる限りリスナーと近づこうとする姿も二十歳の等身大を感じさせる。ジュース・ワールドに追討の意を表して「GO」を披露する場面もあり、マイク1本で放つメロディの求心力は特大で、終盤の「STAY」、「Love Again」「WITHOUT YOU」をいうヒット曲を連ねた流れは特に心奪われるものがあった。力強く腕を左右に振るオーディエンスの姿を見て嬉しそうな笑顔を浮かべていたラロイ。若々しく迸るパッションが貫いていた。


Awich(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.


Awich(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

【Awich】

昨年のソニックマニアに続き、サマソニに初登場したクイーン・オブ・ヒップホップ、Awich。入場規制がかかったSONIC STAGEを見渡し、「人生においてくじけそうな時はあると思います。自分を見失いそうになった時、この言葉を思い出してください。お前誰?」と言って、「WHORU?」へ。続く「洗脳」では、サマソニ開催期間中、海浜幕張駅をジャックしていたAwichの数々のパンチラインをピックアップしたポスターにも「お前誰?」と共に載っていた「バカばっかだ全く」というラインももちろん飛び出す。

自らも所属するクルー・YENTOWNのMonyHorseが登場した「Link Up」に続き、「GILA GILA」ではJP THE WAVYが現れ、SONIC STAGEは大盛り上がり。「失敗は成功のもと。成功の反対にあるのは何もやらないことだぜ!」と言って、CHICO CARLITOを招いた「RASEN in OKINAWA」へ。「CHICOさんが来てるってことは、この曲やらないといけないよね?」と言って、SugLawd Familiar のVanity. Kも呼び入れ、SugLawd Familiarの「Longiness」のリミックスバージョン「LONGINESS REMIX」を披露。ヒップホップマナーでもあるルーツへの愛を胸に、ここサマソニにも、THE FIRST TAKEにも、POP YOURSにも、Mステにも沖縄のクルーを連れていくAwichはやはりかっこいい。このまま初のアリーナ単独公演、そしてグラミー賞獲得に向けて突っ走ってほしいと切に思った。


この日だけのコラボレーション等、特別なライブも多く見られ、貴重なチケットを手に入れた多種多様なオーディエンスの活力となり得る2日間だっただろう。2023年は世界中でこれまでにないほどの酷暑を記録しており、当然サマソニも非常に暑かった。熱中症を訴えるオーディエンスが多くいたという。夏の過ごし方が根本的に変わっているということは、必然的に夏フェスとの向き合い方も変わる。来年は運営側の何らかの暑さ対策が加わる可能性も大いにあるだろうし、オーディエンス側もより意識的に対策をする必要があるだろう。双方が万全の状態で、二度とないその年だけのサマソニを味わえるのがベストだ。

【写真ギャラリー】サマーソニック ライブ写真まとめ(記事未掲載カット多数)

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