ブラーのデーモン・アルバーンが語る復帰作に込めた思い、サマソニと日本での記憶

ブラーのデーモン・アルバーン、2023年6月のPrimavera Soundにて(Photo by Xavi Torrent/Redferns)

ブラー(blur)が本日7月21日、約8年ぶりとなる最新アルバム『The Ballad Of Darren』をリリースした。Rolling Stone Japanでは中心人物であるデーモン・アルバーンの単独ロング・インタビューを実施。復帰作に込めた思い、今夏にヘッドライナーを務めるサマーソニックへの出演について語ってもらった。聞き手は音楽評論家・岡村詩野。

やはりイギリスには…いや今の現場にはブラーが必要だ。ニュー・アルバム『The Ballad Of Darren』を聴けば、おそらく誰もがそう感じるのではないだろうか。それは、彼らがやはり世界に誇るポップ・バンドであることをこのアルバムで見事に証明してくれたから。そして、ポップ・ミュージックとは本来、社会の写し鏡であることもまた、立証してくれたからだ。

2023年はバンド結成から35年、何か起こるのではないかと多くの人が予感していたことだろう。実際に昨年11月、2023年7月8日にウェンブリー・スタジアムでライブを行うとアナウンス。デーモン・アルバーンが『NME』のインタビューでブラーとしての再始動について非常に前向きな発言をしていたこともあり、当初は一夜限りと思われていたが、ここ日本ではサマーソニックへのヘッドライナーとしての出演が発表されるに至った。そして、5月20日にニュー・アルバム『The Ballad Of Darren』のリリース告知……。ちなみに、2023年は既にデーモンはゴリラズで、ギターのグレアム・コクソンは別ユニットのThe WEAVEで、ドラムのデイヴ・ロウントゥリーも1stソロを……と相次いでリリースされていて、ちょっとしたブラー・イヤーとなっていることはファンの方なら先刻ご承知のとおりだが、ここに届いた新作『The Ballad Of Darren』はちょっとすさまじいアルバムと言っていい。デーモンはいつだって本気だが、このアルバムは人生の折り返し地点を超え、メンバー全員50代に入った彼らが現代社会について嘆き、憂い、心を痛め……でも決して未来を諦めない、そんな意志表明のような作品だ。そして、これはリアルな物語であり、50年後、100年後の目線から見た寓話だ。バラッドとは寓話、伝承物語を意味する。それをポップなフックの楽曲の中で表現しようとしたそのアイロニカルなスタンスと言ったら! それこそポップ・アート、ポップ・ミュージックの醍醐味ではないだろうか。

プロデューサーにジェームス・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)を迎えて完成させた、前作『The Magic Whip』(2015年)以来8年ぶりの新作について、デーモン・アルバーンに話を訊いた。


ブラー(Photo by Reuben Bastienne-Lewis)

―ニュー・アルバム『The Ballad Of Darren』はジェームス・フォードのプロデュースです。ゴリラズの5作目『The Now Now』(2018年)のプロデューサーとして関わったのも、グレアムのユニット、The WEAVEのアルバムでプロデュースを担当したのも、まさしくジェームス・フォードでした。あなたとグレアムにとって今最も信頼できるプロデューサーですね。

デーモン:ああ、共通の基盤は間違いなくあったね。1999年にバンドがフルタイムで活動しなくなってから、僕たちはいろいろと一緒にやってきた。グレアムも僕も様々なプロジェクトをやってきて、いろんなタイプの音楽をやってきたんで、1999年以来僕たちの作業の仕方が形を変え発展していくのは当然のことだったんだ。それ以降僕たちは一緒に仕事をしてはきたけど、今回はみんなで協力してとても正統かつ伝統的なブラーのアルバムを作り上げたと思うね。というわけで、ジェームス・フォードはうってつけの選択だった。これまで、僕たち(デーモンとグレアム)双方と一緒にやってきたんだからね。そして彼は素晴らしいプロデューサーでもある。人間的にも素晴らしいし、とても才能あるミュージシャンで、直感力がとてもあって、とても賢い。この仕事にとっては完璧な人だった。

―もともとジェームスとはいつ頃、どのような経緯で知り合ったのですか?

デーモン:彼と初めて会った時のことは憶えていないなあ。かなり前のことだよ。とにかく、彼のことを知っていたんだ。アークティック・モンキーズがこの世に出現してからというもの、僕はジェームス・フォードのことを知っていたんだよ。

―ジェームスはあなたよりも10歳ほど若いです。あなた方はスティーヴン・ストリート、ウィリアム・オービットといったキャリアのあるベテランと組むことが多かったですが、若い世代にプロデュースを委ねることで、どのような発見、刺激があったと言えますか?

デーモン:ジェームスは今では名声がかなり確立した(established)プロデューサーだ。僕がこれまで一緒にやってきた中で名声が最も確立したプロデューサーじゃないかな。でも、どうだろう……もっと確立した人と一緒にやったかなあ……ああ、僕がこれまで一緒にやってきた中で、トニー・ヴィスコンティが最も確立したプロデューサーかもしれない。確かにスティーヴン・ストリート、ウィリアム・オービットもそうだね。でも、僕がスティーヴンと組んだ時、彼はこの世界に入ってからまだそんなに経っていなかったと思うよ。今の彼はもちろん確立しているけど、一緒に仕事をした頃の彼はそれほどではなかったんだ。で、ジェームスと一緒にやって発見があったかどうかってことだけど、僕は毎日音楽に接しているから、スタジオで一緒にやっていて楽しい人もいれば、ちょっと問題な人もいる。でも彼は、僕が一緒にやっていてとても楽しかった人の部類に入るね。だから、彼とはまたいつか一緒に組めたらと思っているよ。

Translated by Mariko Kawahara

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