8月19~20日にかけて開催され、多くの反響を呼んだサマーソニック。音楽ライター・小松香里が東京公演2日間の模様を振り返る。【写真ギャラリー】サマーソニック ライブ写真まとめ(全117点)コロナ禍における声出し等の制限が解け、完全なるサマーソニックが戻ってきた。東京会場の初日のヘッドライナーは昨年再始動し、2003年以来のサマソニ出演となるブラー。同年はグレアム・コクソンが不在だったため、4人が揃った編成では初のサマソニだ。2日目のヘッドライナーはケンドリック・ラマー。2018年、大雨の中で登場したフジロックのヘッドライナー以来、5年ぶりの来日となる。
ブラー以外にもリアム・ギャラガー、ウェット・レッグといったUKロック勢や、NewJeans、ENHYPEN、TREASURE、SOLといったK-POP勢が出演。多種多様で旬なサマソニならではの華やかなメンツが顔を揃えた。
また、「”so sad so happy” Curated by Gen Hoshino」と題した星野源がキュレーションするBEACH STAGEにジェイコブ・コリアー、カミーロ、UMI 、アリ・シャヒード・ムハマド(ア・トライブ・コールド・クエスト)といった星野が敬愛するアーティストがたっぷりとラインナップされたことや、東京初日・MOUNTAIN STAGEの初っ端、MAZZEL、SKY-HI、BE:FIRSTというBMSG所属のアーティストが3連続で登場する流れもスペシャルだった。チケットが早々にソールドアウトした東京会場の模様をレポートする。
「”so sad so happy” Curated by Gen Hoshino」で実現した星野源、UMI、ジェイコブ・コリアー、カミーロの共演(Photo by TAICHI NISHIMAKI)東京1日目・8月19日(土)ブラー(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.ブラー(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.【blur】東京初日のMARINE STAGEヘッドライナーはブラー。完全体ブラーによる初のサマソニは8年ぶりのニュー・アルバム『The Ballad Of Darren』収録のノイジーなギターが印象的な「St. Charles Square」からスタート。デーモン・アルバーンは「Thank you very much! ありがとう!」と言って、アウターを脱いでストライプのシャツ姿に。ステージ上に「POP SCENE」のネオンが光る。盛り上がるオーディエンスに向けて、「ファンタスティック!」と賞賛の声を上げるデーモン。アレックス・ジェームスはぎっしり埋まったスタジアムを感慨深げに見つめながらベースを弾く。感慨深さはこちらも同様だ。
両手を合わせてお辞儀するデーモンの横で「乾杯!」と叫ぶグレアム。心弾むイントロが聞こえ、グレアムのボーカル曲「Coffee & TV」へ。デーモンが「初来日は1991年」と微妙に間違えたのもご愛敬(本当は1992年)。とにかく嬉しそうだったメンバーたち。「To the End」では、ハンドマイクでステージ上を移動しながらグレアムの首元に噛み付く真似をしていたデーモン。その後披露された最新アルバム曲「Barbaric」がとりわけ素晴らしかったのも、今のブラーの好調ぶりを表していた。
エレクトリックなイントロから、サイレンのようなグレアムのギターリフに雪崩れ込み「Girls & Boys」。へ。自身のシグネチャーとも言えるFILAのトラックジャケットに着替えたデーモンが、レインボーフラッグを肩にかける。ジェンダーの壁を消失させ、「Always should be someone you really love」という大合唱が巻き起こった光景は、30年前の懐メロを楽しむそれではなく、「今」そのものだった。
「Songs 2」でオーディエンスを見つめ、両手をバッと開いて、笑顔で「Love you」と呟いたデーモン。グレアムが「Tender」の旋律を奏でると、マリンスタジアムのあちこちでスマホライトが照らされ、左右に揺れた。「The Narcissist」の長いイントロでは、30年以上の歩みを確かめるかのように、お互い顔を見合わせた面々。ラストは優美なオーケストレーションから始まる「The Universal」。デーモンとグレアムがハグした後、4人で肩を組み合っておじぎ。新たな名曲群と過去のヒット曲を織り交ぜたセットリスト。瑞々しさと円熟味が不思議と共存する唯一無二の音楽性の強度もさることながら、デーモンが両手を合わせて何度もおじぎをしていたり、再び日本のオーディエンスと時間を共有できたことがとても幸せそうだった。なんと良い歳の取り方をしているバンドなんだろうか。
NewJeans(Photo by Siyoung Song) (C) 2023 ADOR. All Rights Reserved.NewJeans(Photo by Siyoung Song) (C) 2023 ADOR. All Rights Reserved.【NewJeans】出演が発表されたタイミングで万単位のチケットが動いたという、今世界一旬なアーティストと言っても過言ではないNewJeans。先日開催されたロラパルーザ・シカゴでも驚異的なフェス仕様のパフォーマンスを見せ、さらに世界中を夢中にさせたことも記憶に新しい。
フェス序盤とは思えないほど多くの人々が詰めかけたMARINE STAGE。みるみるうちにバンドセットが組まれていく。MCのサッシャが「めっちゃすごい数のダンサーがいた」と明かす。ということは、ロラパルーザ同様のバンドセット&大量のダンサー登場という演出が生で体験できるということだ。
「Ditto」のフローラルなイントロが流れ、制服姿で踊るMVがビジョンに流れる。怒号のような歓声の中、涼しげな「トーキョー!」という声が聞こえ、短いトップスにルーズソックス姿のMinji(ミンジ)、Hanni(ハニ)、Danielle(ダニエル)、Haerin(へリン)、Hyein(ヘイン)が登場。軽やかで瑞々しい等身大の魅力を爆発させる。続く「OMG」では、5人のしなやかで機敏なパフォーマンスに目を奪われた。曲中にオーディエンスに笑顔を贈ることも忘れない5人のMCはすべて日本語。Minjiの号令により、「こんにちは! NewJeansです!」と挨拶し、一人ひとり日本語で自己紹介をし、歓喜を溢れさせながら、この後のステージの楽しさを約束した。
Minjiが「楽しむ準備はできてますか? 次の曲にいきましょう!」と言ってバンドアレンジが映える「Cookie」。5人で下手から上手に移動し、サビでは5人がちりじりになってジャンプ。腕を突き上げて数万人とカウントダウンをした後、世界に衝撃を与えた「Attention」へ。体中の力が抜けていくような心地よいグルーヴの威力が増しながら、サビに辿り着いた時の心地よさといったら。Danielleが「みなさん、本当に最高です!」と言って、「Hype Boy」でクールな風を運ぶ。
一旦5人とバンドメンバーがステージからはけて、後半戦へ。最新作2nd EP『Get Up』に収録されている「New Jeans」から「ASAP」までの6曲を順に披露。ビジョンに『パワーパフガールズ』とのコラボ映像が映り、アウトロで大量のダンサーが登場した「Super Shy」ではエアロビクスを彷彿とさせるダンスに合わせて踊るオーディエンスが多数登場。フレンドリーな磁場を形成した。
【写真ギャラリー】サマーソニック ライブ写真まとめ(記事未掲載カット多数)ホリー・ハンバーストーン(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.ホリー・ハンバーストーン(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.【Holly Humberstone】ルイス・キャパルディやオリヴィア・ロドリゴのオープニング・アクトを務めた23歳のホリー・ハンバーストーン。ブレイクのきっかけとなった2ndシングル「The Walls Are Way Too Thin」で、薄い壁で隔てられた隣人への切実な思いを乗せたところから始まり、透明感と清涼感あふれる歌声を武器に、ジャンルの壁を軽々と超える佇まいは新世代のシンガーソングライターならでは。「みんなかわいい!」と日本語で話しかけたり、天真爛漫にメンバー紹介をしたり、フレンドリーにオーディエンスに話しかける姿もとてもキラキラしていた。
ホンネ(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
ホンネ(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.【HONNE】自らの音楽と同じように、ウォームな雰囲気の中で迎えられたアンディとジェイムスによるホンネ。しっかりと場内が温かくなったところで演奏した「Location Unknown」では、愛するあなたとの距離を切なく歌い、サビでは大量のバンドクラップが起きた。「Crying Over You」や「la la la that’s how it goes」といった珠玉のメロディを宿した楽曲を連発し、大合唱を誘う。至高のラブソング「no song without you」を経て、イントロでハンドクラップが起こったラスト曲「Day 1」を演奏した後、アンディが「素晴らしい時間だった」と伝え、「See you soon!」と言って去っていった相思相愛のピースフルなライブだった。