ソニックマニア総括 ジェイムス・ブレイクらが提示した「深夜ならではのカタルシス」


ムラ・マサ(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)


ムラ・マサ(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

【Mura Masa】3:10~4:10

オウテカが終盤に差し掛かったところでMOUNTAIN STAGEへ。このステージのトリを務めるムラ・マサのライブがもう始まっている。筆者がフロアに辿り着いたときには、ムラ・マサが生でスネア&タムを被せるドラムンベースのビートが鳴り響いていた。ジャージークラブとレイヴミュージックとドラムンベースの混合体「Whenever I Want」だ。筆者は巨大なマウンテンのフロアの中央右寄りにいたが、観客は互いに適度な距離を取って激しく踊っている。このノリは完全にライブではなくクラブのそれだ。フロアの熱気に当てられるように、ムラ・マサのテンションも上がる。正直言って、この夜のライブは2019年の単独来日公演とは比較にならない素晴らしさだった。アーティストとオーディエンスの相互作用、興奮と熱気の絶え間ない交換が美しい空間を生み出していた。終盤には自身が共同プロデュースしたピンクパンサレスの曲、「Boy’s A Liar」「Just For Me」を二連発という大サービス。そして最後はツアーシンガー2人が一緒に出てきての「Firefly」で大団円。高揚感と多幸感と達成感に満ちた空気で、MOUNTAIN STAGEの最後を締めくくった。


【ICHIRO YAMAGUCHI】4:00~5:00

外は少しずつ明るくなりはじめているが、ソニックマニアはまだ終わらない。サカナクションの山口一郎がオーガナイザーを務めるクラブイベント、NFの特別ステージはメッセからはみ出るくらい人が溢れている。それもそのはず。このステージのトリを務めるのは主催者ICHIRO YAMAGUCHIだ。筆者はステージ移動の際に何度かNFステージに立ち寄ったが、4つのステージの中でもっともストイックにDJ/クラブイベントの空気を創出し続けていたのがNFだった。ICHIRO YAMAGUCHIも硬派なテクノでまだまだ踊り足りない観衆をどこまでも熱狂させ続けていた。


ソニックマニアの会場内は大混雑だったが、チケットはソールドアウトまでは至らなかった。今年のサマーソニックが早々に両日完売したことを考えると、ソニックマニアには二の足を踏む客も少なくないのだろう。オールナイトだから翌日のサマーソニックに支障をきたすと躊躇した人もいるかもしれない。だが、ソニックマニアにはサマーソニックでは絶対に味わえないオールナイトならではのカタルシスがある。特に今年はそれを強く実感した。ジェイムス・ブレイクが提示したアグレッシブなビートへの熱狂、フライング・ロータスの豪放な楽しさ、オウテカのマッドな興奮、そしてムラ・マサを触媒として広大なMOUNTAIN STAGEに広がったオーディエンスの歓喜――それらは、どれも深夜のあの時間帯だからこそ生まれたものだ。音楽の世界には一晩のストーリーの中でしか味わえない感動もある。それをあの規模で実現するソニックマニアは本当に稀有なイベントだ。

【写真ギャラリー】ソニックマニア ライブ写真まとめ(全64点)

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ムラ・マサ(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

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